全然知らなかったのですが、十一月の半ば新宿御苑で二本松の菊人形の特別展示があったとのことで、その際、小規模な物産展も開かれたようです。たまたま職場に近かった友人が果物やお菓子を買い求め、家で食べた大きなりんごは蜜が入って本当においしかったとのこと。うれしかったのはその話の続きで、「あまりにおいしかったので翌日もう一度行ったら、りんごはあと3つだけになっていてそれを全部買って帰った」と聞いたことです。私はかねがね福島のりんごはどこよりもおいしいと思っているのですが、それが裏付けられた気がしました。
東京では青森のりんごをよく見ますが、私が福島の直売所で買うりんごには到底かないません。秋が来て最初に出るりんごで昔からある紅玉やジョナゴールド、比較的新しい品種の陽光、新世界、ほおずり、シナノスウィート(これは長野産か?)等もりんごらしいりんごですが、やはりなんと言ってもりんごはサンふじで決まり。非の打ちどころがありません。関西から来て初めて福島のりんごを知った方が、「おいしすぎて一日何個も食べてしまう」と言っていました。
夏が終わり、秋が来たなと思うとすぐあたりがあっという間に秋色の世界に代わっていきます。あれほど手に負えなかった雑草も緑色から茶色に枯れていくのです。その時、年によっても違うのですが、十月から十一月にかけての或る時期に、辺り一面が黄金色に輝く日が訪れます。一週間あるかないかの本当に短い時間です。ちょうどサンふじが出始める頃で、この時が一年中で福島の最も美しい時だと思います。えも言われぬ美しさでとても写真などにおさめられそうもないのですが、あれは柴の色です。その中に柴犬を置くと全く同じ色で、日本の犬の原風景がそこにあります。