2017年7月23日日曜日

「幻のがまくん」

 朝の散歩から帰ってりくをつなぎ、草むしりをしていた時のことです。裏の小屋の前の雑草を取ろうとして、思わず「ヒッ」と飛びのきました。何か茶色の生き物がぬっと出てきてぴょんと跳んだからです。蛇かと思ってぎょっとしたのですが、それはどう見てもがまでした。すぐに草むらに隠れてしまいましたが、体調30センチ近くもある巨大で重そうながまでした。

 私が家の敷地内でがまを見たのはこれが初めてです。第一このへんには水がない。朝は草に露が降りていますがそれで生きられるわけではないでしょう。川までは直線距離で70メートルくらいでしょうが、そのあたりの河原に住んでいるとは思えない。ずっと離れた、りくの散歩道から見えるところにはがまの生息地があります。ごく小さな池のような水場なのですが、湧水がでているので生物が集まってくるようです。そこへ降りる階段はないので上から眺めるだけですが、「グァ、グァ」とがまの鳴き声がしています。しかし、兄の話ではそこのがまはさほど大きくはなく、10センチほどとのこと。また家までは300メートルも離れているので、そこから来たとも思えないのです。二日ほど前に大雨が降りましたが、道路が川になるほどの雨ではありません。何より心配なことに、近所に猫の多頭飼いをしている家があるのでうちの庭も我が物顔に荒らしていて、いつもりくの怒りを誘っているのです。りくはがまくんと仲良くやれると思いますが、猫に見つかったらひとたまりもないでしょう。とりあえず、がまくんの隠れ家を保持すべくその日の草取りは中止になりました。

 その晩、表通りの方で猫の鳴き声がひどく、りくが家の中で「ウーウー」唸っており、私はがまくん大丈夫かなと案じておりました。翌朝、昨日がまくんがいたあたりを捜してみましたが、当然のことながらもう見当たらず、きっと安全な場所に引っ越したのでしょう。こうなってみると、今更ながら私が見たのは本当にがまだったのかちょっと自信がなくなってきます。何かの前兆ではないだろうかと思ったりもします。がまくんよ、君はどこから来たのか、何者だったのか、そしてどこへ行ったのか・・・夏の朝に幻でも見たのではないかという、不思議な気分です。