2017年7月11日火曜日

「怖すぎます」

 ここ何日か、聞こうとしなくてもラジオから漏れてくる呪いの叫びがあります。二人とも女性で、一人は運転経路を間違えた秘書を罵倒する国会議員、もう一人はネット上に夫への罵詈雑言を流している俳優の妻です。どうしてこうなってしまうのでしょうか。

 誰もが不思議に思うのは、社会における自分の地位や立場を考えると、自分に対してなされた他者の行為に比して、なぜここまでと思うほど過剰な反応をしていることです。一般の人の目には常軌を逸しているとしか見えません。ここから考えられることは、この方々は主観的には自己の生存権を侵されていると感じているのだということです。事実、国会議員Tの場合、秘書の身体を叩きながら、「お前は私の心を叩いている」と絶叫しており、彼女にとってこの行為は正当防衛なのです。経歴を見るとこれまで何一つ思い通りにならないことはなかったであろう高学歴の女性です。この方の場合は、国会議員という道を選んだことが唯一の失敗と言えるのではないでしょうか。もう少し自分の能力や努力がそのまま業績に反映されるような職を選ぶべきでした。政治などは或る意味人気商売で、しかもこの方の場合あらゆる点で自分よりはるかに劣る一般大衆を相手にするのですから、うまくいくはずがありません。いずれ国会議員は辞めざるを得ないと思いますが、それで転身できるならこの方にとってはよいことです。ただ家族、特にいきなり地獄に突き落とされた子供たちは本当に気の毒です。

 俳優の妻Mの場合は、献身的に夫を支えてきた伴侶というのが唯一のアイデンティティだと本人が自覚しています。夫から離婚を突きつけられることは自己の存在の基盤を失うことなのです。器用な人でもあるようでカリスマ主婦として資産を築き、タレント的な振る舞いもしていますが、夫を支えることが自己目的化していなければ今回のような行動にまで走ることはなかったでしょう。最悪の意味で、自分以外の人のために生きてしまったこの方は今後とても難しい問題を抱えることになります。恨みという形で爆発するしかないので、見苦しい姿をさらし続けることになるでしょう。もはや唯一の目標は相手を社会的に葬り去ることなのです。人気商売そのものである当の夫は針のむしろを覚悟しなければなりませんが、相手が悪すぎました。気の毒です。

 共通して言えるのは、この二人の女性は「自分しかいない」ということ、従ってその意味では5歳の子供と同じだということです。結局のところ、他者は自分の欲望に奉仕する限りにおいて存在し、自らは神のごとくに振る舞っているのです。ちょっとでも自分を客観視できるならそのおかしさがすぐわかるはずですが、気づいてくれることを願うばかりです。とにかく、呪いの言葉を吐くのはもうやめてください。マスコミももう取り上げないでください。聞きたくないのです。