2016年7月7日木曜日

「英国のEU離脱について」

 6月24日は日本のテレビでも一日中イギリスのEU離脱の話題を扱っていました。国民投票の結果、ぎりぎりでEUに留まるだろうとされていた予想が外れたからです。恥ずかしながら、私は今回の騒動で初めてイギリスがEUに加盟していたことを知ったので離脱という結果に驚くことはありませんでした。報道によると、特に移民の流入に対する感情的な反発がこの結果を生んだ大きな要因の一つだったということで、あるテレビ局の特派員は現地のメディアの言葉として、普段あまり感情を表さない英国人がノルマンディー上陸作戦の成功およびダイアナ妃の死亡時以来示した強い感情表出だと語っていました。

 もともとヨーロッパとはヨーロッパ大陸のことなのですから、歴史においても国民性においても全く異なる英国が加入していたことが土台無理だったのです。自国通貨を保持し、域内国境での出入国管理は基本廃止なるもドーヴァー海峡の英国側ではなにがしかの入国審査が行われる等、これまで様々なワガママが許されていたのです。そもそもヨーロッパ連合への加入が無理だったと考える方が自然です。経済活動における有利性を捨てて国としての形を守るという選択はそれはそれで一つの見識です。ただ、金融業界の人々はグローバル経済にどっぷり浸かっている人たちですから離脱によって大きな損失を受けるのは当然としても、その余波によって他の産業に携わる人がこれまで享受してきた経済的恩恵を喪失する打撃にどこまで耐える覚悟があるのかという点と、これが国家的判断としてなされ各個人に及ぶ影響が百人百様であることが大きな問題でしょう。頑張ってくださいとしか言いようがありません。

 一番強く感じたのはグローバル経済に基づく思考が英国の良識を大きく損なってしまっていたことが露わになったことです。いやしくも民主的手続きで決定したことなのですから、議会制民主主義の規範としての態度を示してもらいたいものです。あとになって投票のやり直しやら地域的(スコットランドやロンドン)英国離脱の議論やら離脱推進派議員の党首選出馬辞退やら離脱交渉の引き伸ばしやらの動きは見苦しく、それこそ他国が持たない英国のブランドイメージを傷つけるものです。グローバリストによってここまで英国がむしばまれていたのかという残念な気持ちです。日本にも甚大な被害が及びそうですが、これからどうなるのでしょうか。個人的には何があっても「ま、なんとかなるでしょう。」と思っています。