とにかく並はずれたプラス思考で、そのためチャンスが向こうから束になってやってくるような方です。専門家に無理と言われても本当にそうだろうかと検証してみて、できること、上手くいくこともたくさんあると自分で積み上げていきます。キャリアコンサルの資格を取る時、全盲を理由に一つの資格の受験を断られても別のもっと有利な資格が取得できたり、ハローワークの職員から「鍼灸マッサージ以外の仕事はゼロ」と断言されても、「今まで誰もやったことがなかったのだから前例がないのは当たり前」と突き進んでいきます。1社目はクビ、2社目は倒産でもめげません。倒産というのは社長が認めない限り起こらない経済現象なのだそうですが、この方は他の営業マンがどっと抜けていくなか、半年間無給で働き、クレーム処理から始めて徐々に信頼を回復してお客様を引き継いだというのですからあっぱれです。全盲だからいやでも目立つ、すると営業に出ても異常に丁寧に扱われたり、仕事ぶりを見て目をかけてくれる方々(エライさんも多い)が出てくる。周りが起業家ばかりの環境にいると、甘えたサラリーマン意識を捨て自分の環境は自分で変えるのが当たり前になってくる。二番目の会社では、リクルート出身者もいる十数名のばりばりの営業マンの中で月間売上第一位の営業成績を上げるようになっていく。
現在お勤めの三番目の会社は障碍者枠ではなく一般枠で応募したとのことですが、2~3名の採用枠に健常者50名の応募があったのに、真っ先に採用が決まったのが彼女で、理由は「前の会社で無給時代に成果を上げたから。」だったそうです。どんなことからでも経験は積めるのです。また、中小企業のよい点として、「能力を最大限発揮して生き残るか、クビになるかの二択しかないこと」を挙げていました。中小企業はどこか暇な部署で飼い殺しにしておくような余裕はないからでしょう。他には「愚痴っぽくて責任転嫁する、被害者意識の強い人と付き合うのは絶対だめ」と言っていました。
その後、大変困った上司を頂いて苦労されたようですが(休みがちだが出社すると突飛な行動に出る、お膳立てをすべて彼女にやらせていいとこ取りをしようとしたり、彼女が開拓した会社を横取りして自分に引き継がせるように命じるといっためちゃくちゃな上司・・・ご推察の通りご病気を抱えた方です。)、社長に話しても埒があかないと見るや考え方を変える。「こんな人を放任する会社だからこそ全盲の自分を迎え入れ、こまごました失敗や全盲ゆえにどうしてもできないことを赦されている。」と考え、自分を助けてくれている味方の方が断然多いことや応援してくれている企業の顧客に感謝し、上司の不審な行動を記録しつつも振り回されずやるべきことをやり言うべきことを言っていったというすごい方でした。この上司はかつて病気になる前は大変実績を上げて会社を支えていた人だったことから、「なんとかしてあげたい。責任を与えて育てたい。」という社長の意向があったことも後にわかり、「私はヒラにして、とうとう上司を育てる立場になってしまったのです。」と笑っていました。このくらいの豪傑でないととても社会に風穴を開けることはできないでしょう。いや久しぶりに痛快な話を聞きました。