りくに関して心配にもなり感心もするのは、食べ物に全く執着しないところです。何かあげるとき出した途端にかっさらっていくとか、がっついて食べるということがないのです。お気に入りのおやつを「はい、食べ。」とあげる時も、まるでスローモーションのようにふわっと口をあけ、端っこをそっとくわえて私の手を離れるまでに数秒かかります。おやつを渡すだけなのにどうしてこんなに時間がかかるのかと思うくらいです。例のドイツの柴犬は始終お腹を空かせて飼い主にプレッシャーをかけているようなのが、ちょっとうらやましいくらいです。特筆すべきは、この二匹の柴犬は野生のネズミやウサギを狩ることで、これは真似してほしくない。ま、りくには無理だろうけど。犬歯の長さと鋭さがりくとまるで違うのです。いつも磨きをかけているからでしょう。
暑くなるとりくの食欲は目に見えて落ちます。
「りくのごはん茶碗どこかやった?みあたらないんだけど。」
「いつものとこでしょ。隠してるんじゃないの。」
半信半疑でいつもの置き場の隣にあったタオルをのけてみると、確かにその下から相当ドッグフードを残したままりくの茶碗が現れました。余分な食べ物を隠しておくのは動物の習性なのでしょうが、今までも何か踏んだなと思うとりくがラグの下に鼻で隠したドッグフードだったことがよくありました。しかしこんなに完璧にタオルで隠してしまうとは・・・。食事を残したことで叱ることはないのですが、暑くて食欲がなくて残すと、「またこんなに残してる。」とがっかりしてしまいます。もしかすると家族の失意を汲み取って、この行動にさらに拍車がかかってしまうのかもしれません。こっちはこっちで、あげたものをおいしそうに食べているのを見ると無上の幸せを感じるのですからいたしかたないのです。