2015年8月18日火曜日

「犬たちに学ぶ安全保障」

 犬たちの世界にも様々な掟と関係性があるようです。以前「紅春 44」に電飾ガオー君のことを書きました。あの子はとにかく凶暴でそれゆえ普通の時間帯には散歩ができないのです。それでも飼い主さんに大事にされている様子はほほえましいのですが、犬社会ではやはり困った存在と言ってよいでしょう。りくがすれ違いざま襲われた時、りくは前足で相手を突いて身を振りほどくなりなにがしかのやり返しをしたのですが、これこそが正当防衛、国でいえば個別的自衛権の行使でしょう。両者の飼い主が真っ先にしたのは二匹を引き離すことでした。被害を出さないためには戦わせないことしかないのです。最悪なのは加勢が来ること。りくなりガオー君なりにそれぞれ味方がやってきたら、興奮した犬たちはもう収拾がつかず戦いは激しくなりまた拡大するのは火を見るより明らかです。だから集団的自衛権は絶対だめなのです。

 もう一つの例は毎朝のことなのですが、散歩から帰った後しばらくりくを外に出しておいた時のことです。そういう時りくは土手の道を通る人たちに挨拶したりされたりしています。大人も子供も知っている人は土手の上から「りくちゃ~ん」と声をかけてきます。りくはおすわりをして見送ります。ところが先日、犬たちの激しいガウり声が聞こえ飛んでいくと、大きくてでっぷりしたコリーと飼い主のおじさんがいて、犬同士は一戦を交えた模様でした。おじさんは平謝りしており、私はりくに怪我がないことを確認しほっとしました。このコリー君はゆったりしたおとなしい子で、普段土手の道ですれ違う時はなんの問題もありません。この時はコリー君が「りくに会いたい」というのでおじさんが庭まで連れて来たとのこと。私がその場にいれば展開は全く違ったのでしょうが、はっきりしたのはりくがこれを縄張りの侵害と受け取ったということです。りくはいつも縄張りの保全に余念がなく、猫などの敷地荒らしを許しません。今回もりくはりくなりに家を守らなければと行動に出たのです。ここからわかることは、国家でいえば普段から領土の保全にこまめな目配りをしながらしっかり防衛することと同時に、自国が他国を侵犯したと受け取られかねない行為は極力避ける、すなわち外へ出て行かないことが一にも二にも大事だということです。同盟国の援軍のつもりで第三国の領土へ出て行ったりするのはもってのほかです。

 犬は本能的に戦いを最小限にしようと行動しています。無意味な殺し合いはしないのです。なんと賢い生き物でしょうか。国会で審議中の安保法案の趣旨は、「自国が攻撃された時だけでなく、自国の存立や国民の生活に危機が迫っている時も攻撃できる。自国と密接な関係のあるる同盟国とともに世界中どこでも軍事行動ができる。」ということですが、これが「”戦争”法案」以外の何物でもないことは明白でしょう。結局そのために用いられている論拠は大きく二つ。

「自国の平和が他国の兵士の血の上になりたっている、これでよいのか。」 (「戦争に行きたくないというのはわがままだ。」という自民党若手議員のホンネはこれを延長させたもの)
「今日日本の安全保障環境は大きく変化している。横暴なふるまいをする外国の脅威には軍事力で対抗する姿勢を見せることが抑止力になる。」

 これらについては端的に「その論拠は的外れですよ。」と言っていくしかないと思う。前者については、「戦争で血を流したくないなら戦争をやめるしかないですよ」と言い続けること。「皆が戦争をやめれば血は流れない。加勢に行くのは戦争が拡がるばかりなので、絶対ダメ」と。米国の腰巾着でかつスキだらけの日本でイスラム過激派のテロが起きないのは、「曲がりなりにも平和な国として他国で人を殺してこなかったから」以外の理由があるでしょうか。米軍の軍事行動に加わった時点で日本はテロの餌食になるでしょう。今回の安保法案は日本を戦争に引き寄せると同時に、テロを日本に引き寄せるものに他なりません。

 後者については、「ありありと思い出せることとして、冷戦時代には本当に身近に核戦争の危機が迫っていた。今現在、安全保障環境の変化というなら、それはなんといってもテロの脅威でしょう。これは昔はほとんどなかったことだからです。いま本当に切迫した危機として受けとめる必要があるのは、近隣諸国の軍事的脅威よりむしろテロの脅威なのです。そして、軍備拡大と同盟国との軍事協調行動は、抑止力になるどころか相手国のさらなる軍拡を助長するだけ。まったくの逆効果です。」と言い続けること。

 どちらにしても日本政府が米国の評価を気にする仕方と程度は異常です。ひ弱で丸腰の自分がけんか好きの友人に「一緒に戦ってくれ」と言われても困る。「悪いけどそれはできない。相手が悪すぎて家族までやられちゃうから。」と断るか、端的にバイバイするしかないでしょう。別の道を考えるのです。この理路がわからない人は、何の彼の言っても戦争がしたい人だと断定して構いません。

 この二つを同時に解決する方法があります。戦争の世界から「いち抜けた」をする、すなわち世界に向かって「我が国は永世不戦国です。」と宣言することです。戦争に誘われないためには、「あのさ~、とにかくうちは戦争しないんだよね~。」と宣言して、みんなに知ってもらうのが一番ですよね。あれ、これって憲法九条そのものじゃないですか。