2014年10月22日水曜日

「人の命が軽くなる」


 先日、イスラム国の戦闘員の求人に応じてシリアに渡ろうとしていた大学生が逮捕されました。伝えられるところでは、「もしもシリアに行かないとしたら、今年中か、来年にも、間違いなく自殺しているから、シリアで死ぬことになっても、全く変わりがありません。」と語ったと言う。また、「そこには戦場があって、全く違う文化があって。イスラムという強大な宗教によって、民衆が考えて行動している。このフィクションの中に行けば、また違う発見があるかな。」とも。どうやら一番の渡航理由は、違う生活の場に身を置きたいということだろうと思われます。

 現在ヨーロッパ各国でも、ヨーロッパで生まれ育った若者がそれぞれ数百人規模でシリアやイラクに渡航し、イスラム国の戦闘員として参加しているようです。ヨーロッパの若者には思想性があるという人もいますが、私は先ほどの大学生と何ほども違わないと思います。このような若者が次々生まれていることは明らかに社会の不調のせいでしょう。

 グローバリゼーションのおかげで世の中は本当にせわしなくなりました。以前、株のデイ・トレイダーは大金を稼ぐけれども消耗して30代で燃え尽きると聞いたことがあります。一瞬で決断し事が決する過酷な環境に24時間さらされるからでしょうが、これが今は特別な人にではなく、現代社会に生きる全ての人の現実になりつつあります。

 例えば、2027年に開業予定のリニア新幹線は東京―名古屋間を最速40分で結ぶとされていますが、ほとんどがトンネルの中とも言われ、これでどうしようというのでしょう。浮いた時間は次なる仕事に人を駆り立てるだけでしょう。こんなこと一つとっただけでも、これから人生を始める人にとって大変気鬱な希望の持てない未来ではないでしょうか。あまりに人の身体の感覚を無視した現実は人間を損なうことになるでしょう。こういうことが世界的規模で起きているのです。

 人生を生きる価値のないものと思うとすれば自分の命の重さは限りなく軽くなってゆき、同時に他人の命の重さも同様に軽くならざるを得ないでしょう。或る種、破れかぶれの自爆行為が次第に蔓延していくように思えてなりません。