「盲導犬刺される」という事件を聞いた時には、オスカーが声も上げずに耐えていた有り様が可哀そうで悲しくてなりませんでした。こんな健気でいたいけな生き物に残虐なことができるのは人間ではない。悪魔です。弱いもの、力の差がありすぎて抵抗できないものを痛めつけるというのは、どういう神経なのでしょう。
飼い主は目の見えない方であり、なおかつ犯人は犬が着ていた上っ張りをめくって刺したという陰湿な状況を知り、暗澹たる気持ちになりました。どうしてそんなことをされるのかわからなかったであろうオスカーを思うと言葉も出ず、お腹のあたりが痛くなってきます。
しかし、悲しんでばかりはいられません。こういう悪人がいる以上、自衛しなければならないのです。兄とこの話になった時、兄は我を失うほど激昂していました。
「そういう奴は同じ目に合わせないとわからないんだ。」
そしてりくに、
「りく、何かあったらすぐ兄ちゃんに言うんだぞ。兄ちゃん、即座に敵をとってやるからな。」
私もりくに言いました。
「そう、我慢しちゃだめ。何かされたらすぐ『きゃん、痛いよ。』って言うんだよ。姉ちゃんも敵とってやるから。」
この件に関して、キリスト教的赦しの精神が入り込む余地はありません。