2014年9月11日木曜日
「医師が語る終末期の治療」
ホスピスで緩和医療に務めた医師の本を読んで印象に残ったのは、治療に関して後悔する人が多いのだということでした。よくなる可能性があると思えばどうしても治療にとりかかってしまうものの、手術がうまくいかなかったり、化学療法に苦しんだ末に回復することなく亡くなったり、治験段階の療法を試してやってみたものの貴重な時間を失っただけの結果だったり、わらにもすがる気持ちで代替療法に手を出し財産を大方なくしたり・・・と、治療を目指す気持ちから始めたことを後悔する事例がそんなに多いのかと驚きました。家族が病名を本人に隠している場合などは、自分の納得する人生の幕引きを妨げられて取り返しのつかない最期となることも多いようです。そのほか、家族がいがみあていたり、入院中から相続のことでもめていたり、悲惨な最期を迎える人々もたくさんいると知りました。悲しいことです。
病気別「死ぬ時の私の希望」という項目があり、長年ホスピスで勤務した医師の希望とはどんなものかと興味深く読んでみると、基本は、「助かる見込みが少ないのに、救命治療をやりすぎないこと」、「意識が正常でないのに、人工呼吸器、ペースメーカー、栄養補給などの延命治療を続けないこと」、「痛みなどの身体的苦痛は十分緩和してもらうこと」でした。
病気別の対処方法の希望も詳細に書いてあったのですが、それによると、脳卒中の場合、転んだりして硬膜外血腫なら手術、脳梗塞が軽傷で発症から時間がたっていなければ血栓溶解治療、それ以外の脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血は手術しない。人工呼吸器と胃ろうはいかなる場合もお断り。
急性心不全の場合、人工呼吸器をつけたり、心臓動脈にステントを入れたり、不整脈にペースメーカーをつけたりしない。救急病院に運ばれるとあらゆる救命救急措置をされてしまうので、かかりつけ医に事前に蘇生処置をせず自然死させてくれるようお願いしておく。
がんの場合、手術も抗がん剤治療も受けない。痛みがあればモルヒネなどの鎮痛剤をもらう往診を頼み、できる限り自宅で生活する。苦痛コントロールが自宅で困難になったり寝たきりになったらホスピスに入院する。入院したら早めに目を覚ますことのない眠りにつく「鎮静」をお願いする。
徘徊したり寝たきりになったら、不眠時、徘徊時は睡眠薬、向精神薬を処方してもらう。寝たきりになったら、目を覚まさないように睡眠剤や麻酔剤で眠らせてほしい。これが難しい場合でも、強引に食事を与えず、低カロリー、低たんぱく食でゆるやかに最期にむかわせてほしいとのことでした。
なかなかここまで割り切ることはできませんが、過剰な治療で後悔しないという視点もありだなと思わされました。