2014年3月17日月曜日

「不幸中の幸福」


 葬儀の翌日、「11時頃携帯に電話してもいいですか。」というメールを友人から受け取りました。その日私は外で浄化槽を雪の中から掘り起こすのに必死で、時計を見たらもう11時半に近い時刻でした。なにも葬儀の翌日にそんなことしなくてもと思われるかもしれませんが、この仕事はその日の最重要課題でした。

今なら笑い話なのですが、葬儀の日、出棺の2時間前に家にバキュームカーが来たのです。このあたりは各戸が浄化槽を持ち定期的に清掃が行われるのですが、たまたまその日に当たったのです。すぐできることならやっていただこうと思いましたが、浄化槽が雪に埋もれていて今日は無理、また来週出直しますとのことでした。私はこのことに因縁めいたものを感じました。なぜなら入院中にわかった重要なこととして、排泄は人間の尊厳と大きく関わっているという事実があったからです。実際、入院中の問題の半分は排泄の問題だったと言ってもいいほどです。そのためこの排泄の問題を解決するため、私はすでに凍って固くなった雪に風呂場の蛇口からお湯をひいて、さらにつるはしを振るってやっとの思いで浄化槽を掘り出したのです。

 ともかく、すぐ友人の携帯に電話してみました。
「今、清水小学校ってところにいるんだけど・・・」
「はっ? 清水小ってそこの清水小?」
ぶっ飛びました。ぶっ飛んで迎えに行きました。彼女は子供を夫に托し今朝6時に大阪の家を出てきたというのです。住所から携帯のマップを頼りに電車を乗り継ぎ近くまで来て、橋のたもとの和菓子屋で聞いてみたもののわからず、はやり無謀だったかと思っていたところだったと言っていました。向こうから電話しなかったのは家の状況をおもんぱかって遠慮したとのこと。

 彼女は私には絶対できないことをあっさりできてしまう人なのだなあと思いました。会えるかどうかもわからないのに友人にお悔やみを述べるために800キロの道のりをやってくるとは。
結局、1時間半ほど話をして彼女は帰っていきました。しばらくして落ち着いたらあいさつに行きたいと思います。