5月19日から3日間行われた広島サミットが21日に終わりました。気の弱い私のような国民は、「とにかく無事に終わってほしい。外国の要人には何事もなく帰国してほしい」という一心でこの期間を過ごしたのではないでしょうか。大雨や真夏のような日差しの中での警備、飛び入りしたウクライナのゼレンスキー大統領の最高次レベルの警護など、関係の方々にはただ「お疲れ様」の一言です。
そのような状態で過ごしたため中身にはとんと疎いのですが、最終日の閉会後午後3時ごろ何気なくつけたラジオからは、岸田首相の語る声が聞こえてきました。あまりこういったものに関心がない私がなんとなくラジオを消せずに聞いてしまったのは、首相が表面だけ取り繕った言葉ではなく、自分の言葉で語っているなと感じたからです。外務大臣時代にオバマ大統領の広島訪問を実現させたことといい、今回の核兵器廃絶への確信に満ちた言及といい、「広島の平和教育ってすごいな」と思わされました。これは広島出身の首相でなければ絶対できなかったことで、子供の頃から平和教育を受けて成長するとこういう大人になるのかと妙に感銘を受けてしまいました。
オバマ大統領の訪問の時も、「謝罪は求めない、とにかく来てほしい」という広島市民の率直な声が大統領を動かしたと言われており、たとえ不十分でも互いの在り方をよい方向に進めたいと念じた結果でした。今回の事も、これまで熱心に平和活動に取り組んできた方々が言うように、「目新しいものがない」「非核化に向けた政府の実効性のある取り組みが不十分」といった点は紛れもなくありましょう。福島原発問題の後処理が何一つ進んでいないのと同様です。しかし、戦後七十七年の平和教育の中で、広島市民は「空想と理想は違う」、「理想は決して捨てない」、「現実を理想に近づけることを諦めない」、「この問題に短兵急な解決はない」、「ゆっくりでも歩み続ける」といったマインドを血肉化させていったのではないかと思わされました。気が短く、何でも早急な解決を求める現代人に、久々に考えを改めさせる手がかりを与えてくれた気がします。