2021年12月9日木曜日

「家事をめぐる家族の形」

 最近聞いて面白かった2つの話として、一つは海外赴任したご夫婦の体験談、もう一つは家事の減量方法についてのアイディアがあります。

1.海外赴任の主夫と主婦

 二つの体験談は、日本で双方とも仕事をもっていた夫婦の片方が海外赴任となり、夫婦で話し合いの末、単身赴任ではなく、もう一方が仕事をやめて配偶者についていくという選択をしたケースでした。

 夫が仕事をやめて家事を担当したケースでは、日本の主婦と同様、よい食材を求めて奔走したり、子供のお迎え時になんとなく会話に加われず手持無沙汰を感じたり、学校の休みが多くて子供を持て余し、自分の時間を切望するといった姿に、「主婦と変わらないな」と思いました。それだけでなく、妻に申し訳なくて自由にお金が使えない、なんとなく妻の機嫌を伺ってしまう、趣味的に週末料理をする妻をありがた迷惑に思うなど、役割分担が逆転すると夫婦の立場も逆転すること、また、男女の家事能力に性差はないことがわかりました。このケースでは夫が普通の感覚の人だったためそうなりましたが、日本ではこのような場合でも酒浸り、ギャンブル浸りで恬として恥じないタイプの夫が存在します。個人の意識の問題と言えばそれまでですが、日本に厳然としてある家父長的風土がそれを許す土壌となっているのではないでしょうか。

 二つ目は割とよくあるケースで、商社勤務の夫の海外赴任に妻が同行した体験談です。この体験談では、妻は仕事をしたいのに商社の内規で労働ビザが取れないようになっていたという実情がありました。ビジネスマンの配偶者ビザで渡航するのだから、家事の切り盛りを期待されているのでしょう。ただ、東南アジアへの赴任ではメイドを雇うことが一般化しており、時間が余るのでこの女性はネットで現地の記事を書くなどの仕事を見つけ、細々となさっていたようです。「今日はメイドさんが来る日だから、家をきれいにしておかなきゃ」というのは笑えますが、これが日本の主婦の普通の感覚でしょう。そして、笑えなかったのは、この方が「今、自分がこの国にいられる根拠は夫のビジネス渡航の配偶者であることに存し、夫の愛情を失って離婚すれば何も持たずに退去するしかないと気づいたことです。すでに日本での仕事を辞めてきているのです。日本ではぼんやりとしか意識されていなかったことが外国で暮らすことによって先鋭化したのでしょう。

2.家事はどこまで減らせるか

 上記の課題に真摯に取り組んでいる主婦たちがいて、様々な情報を共有し合っています。これはどうも小さな減量を細かく積み重ねていくことでしかまとまった時間は作れないようで、特にお子さんのいる働く女性には必須のスキルです。

  一息入れようと座った途端子供に「麦茶ちょうだい」と言われた体験から、考えに考えて麦茶のミネラルは別の方法で摂取することにし、水道直結のウォーターサーバーを設置、子供が自分で飲める体制を作りました。掃除はお掃除ロボットにお任せで、「ルンバのために道をつけてあげて」と言うと、子供は喜んで片づけをしてくれるとのこと、あっぱれです。洗濯は干す手間を省くため、泣く泣く全自動乾燥機付きドラム式洗濯機に買い替え、乾いたら山にして各自自分でそこから取る、もしくは、下着だけは数を厳選しておき、すぐその場で各自の下着ケースに収納。一番手間のかかる料理については、作り置き家事代行を依頼したり、週に1日は夫に外食してきてもらう、スーパー等でお弁当を買ってくる、子供がテーブルで一緒に作れるような料理(お好み焼き、おにぎり等)にするといった工夫をされていました。時には料理を休んで子供の話をよく聴くようになり、カリカリしながら夕飯作りをしていた時より家庭の雰囲気がずっとよくなったとのことで、これは本当にすばらしいことだと思います。

 一分、一秒がとれないお母さんにはどんな方法を使っても家事を減量し、もっと大切な子供との時間に使ってほしい、また、政府は家事負担の軽減を支援していただきたいです。需要はあるのに高額なのではなかなか手が出ず、成長分野であるはずの家事軽減サービスも発展しないでしょう。残念ながら私には取り入れられそうな減量方法はありませんでした。家事をするのは健康維持と認知症予防が主目的ですし、掃除ロボットを必要とするほどの空間もありません。それに聴く読書になってから、家事の間はむしろご機嫌です。