2019年9月6日金曜日

「各国ニュース報道の傍観から」

 昨日のニュースのおもなものは、日本:電車のトラック衝突事故、幼児虐待死裁判、英国:EU離脱をめぐる国会の紛糾、韓国:大統領側近の数々の私的不正疑惑と、それぞれに特徴的な不幸を伝えていました。しかし、一つだけ一筋の光があったのは、香港からの報道でした。3カ月に及ぶ逃亡犯条例に伴う混乱の後、香港政府が法案撤回を表明したという知らせには正直驚かされましたが、もっと驚いたのは反対派がこれで満足せず、一連のデモに関する警察の対応の検証やさらには普通選挙まで求めたことでした。「民主の女神」と呼ばれ、今回逮捕までされた若い女性は、本当に自然体でしなやかです。一見どこにでもいる少女のようですが、自分の信じるところに従って行動し、様々な困難を傍目にはあっさり越えていくかのように見えます。このタイプの人は確かになかなかいないなと感心させられます。きっと香港というかなり特殊な歴史を持つ地域が生んだ治世の在り方なのでしょう。普通選挙は中央政府が絶対に認めないことでしょうから、今後、事態がどうなるか全くわかりません。彼女には神のご加護を祈るばかりです。

 中国政府は国民の監視活動に国防費以上の国家予算を充てていると聞いたことがあります。コンピューターが中央集権的に専有できた時代ならともかく、非中枢的に共有されている現在にあって、これを監視するというのは相当効率の悪い国家の統治方針なのではないかと思います。しかし、これをやらない限り、国家が崩壊するかもしれないということが、今回の香港の事例で証明されたといってもいいでしょう。香港政府が逃亡犯条例を撤回しなければならなかった顛末について、中央政府は結構おののいているのではないかと思います。加えて、伸び率が7%を切ったら危機的事態になると言われている経済についても、そんな十年で倍になるような成長がいつか破綻するのは明らかです。結論的に言うと、そろそろハードパワーでの統治からソフトパワーでの統治に転換していくしかないように思います。

 アメリカについてのニュースはヒットしませんでしたが、きっと何かあったはずです。「何故これほどまでアメリカに関心が持てないのか」、これがアメリカに関する私の一番の関心事です。これを解明するにはたぶん相当時間がかかるでしょう。国家の成り立ちや歴史はそれぞれ違うので、軽々なことは言えませんが、歴史を概観すれば、国家の崩壊も新国家の建設も、必ず流血を伴う悲劇でした。どちらもいいことないです。ゆっくりすこしずつでも綻びを繕っていくしかないでしょう。どんな国に住む国民にも、その国が「理想からはほどとおいけど、まあそこそこいい国なんじゃない」と思って住める国になってほしい…などと、人ごとのように思いながら、「ほう、9月にもまだ桃が出てるのか。今年最後の桃は『ゆうぞら』という品種か」と美味しい桃をほおばっています。たぶんそこそこいい国なんでしょう。