2018年11月29日木曜日

「紅春 130」

りくは命令されて「お座り」をすることはありません。「お手」も「伏せ」もコマンドさえ知りません。それらは皆、犬にさせる芸だからです。ご飯の時くらいはお座りをさせようとしたこともあったのですが、「なぜお座りという芸をしなければならないんですか」と言われ、「まあそんなこと言わずに、ご飯あげるから」となだめてお座りさせようとしたら、「姉ちゃんは飼い主なんだから、ご飯をくれるのは当たり前でしょ」と言い返されて、その通りなのでぐうの音も出ませんでした。

 りくがお座りをするのはお願い事がある時です。散歩に連れて行ってほしいときはいつまででもお座りの姿勢を崩しませんし、お肉のトッピングでおいしかった時もやはりお座りをし、わかりやすい仕方で「今のもう一杯!」と知らせてきます。人にお願いするときは礼を尽くさなければならないことは、教えなくてもわかっていて自分からちゃんとするのです。

 困るのは、事情を知らない方、宅配の人や散歩中に会った見知らぬ人が、時々りくに「お座り!」や「お手!」のコマンドを出す時です。「あ、教えてないので」と説明しますが、どうも「こんな基本的なことも教えてないのか」と驚かれるようで、りくがバカ犬のように思われるのはつらいです。「あなたは家族に『お座り』をさせるんですか」と言いたいのをぐっとこらえて、その場を耐えています。りくは人間並みに賢いのです。