集合住宅の理事をするようになってよかった数少ないことの一つは、ごくわずかな人ではありますが、お互いの暮らし方がわかってきたということがあります。同じマンションに住んでいても、生活スタイルはおろか家族構成も知らないことが珍しくありません。この目まぐるしい現代にあって、理事会の仕事をやり取りするのは主にメールですが、それぞれが発信する時間にも生活スタイルは表れます。私は超朝型なので四時くらいに起きてメールの処理をすることが多いのですが、目が覚めて眠れないとだらだらするのも嫌なので、3時くらいから起きてしまうこともよくあります。お仕事をされているかたは大抵夜10時くらいからこの作業をなさるようです。
毎年のことだと思いますが、今期の理事会も「長」を決めるのは難航しました。このご時勢、誰もが多忙極まる生活を送っており、たとえ退職していてものんびり暮らしている人など一人もいません。結局「長」になったのは働き盛り真っ只中の方ですが、非常に仕事慣れしており、管理会社とやり取りしながら的確な指示を出してくれるので、結果的に最適の方だとわかりました。しかし、です。果たしてこれでよいのだろうかと思わされるのは、メールの送信時間です。午前零時前であることはまれで、午前1時過ぎのこともあります。夜中に帰ってきてから、また理事会の仕事をしているのです。これはいけないと、私もできる限りの下働きをしてはいるのですが、やはり「長」の肩書は重く、仕事は「できる人のところに集まる」という自然法則により如何ともしがたい状況が続いています。噂では中央官庁にお勤めの方とのことで、繁忙期には連日泊まり込みということもあるようです。
「長」を引き受けていただき申し訳ない・・・、昨年の「長」のように倒れないだろうか・・・と思いつつも、非常に実務に長けた方なので、私もいろいろお手を煩わせたことは確かです。先日、来年予定されている或る設備の全面改修の施工業者を決めるために、依頼状を4社に手分けして送ることになった時には、自分なりに必要項目を押さえた文面を考えてみました。いざ送ろうとしてちょっと不安になり、「長」の送る文面に倣って送ればよいと思いつき、「文面の見本を送ってください」とメールして眠った翌朝のことです。三時ごろ目が覚めて起き出した私がメールチェックをすると、いくつかメールが来ていました。ぼおっとした頭で読むと、「整理して頂いたもので見積依頼書を作ります。統一的にそちらで依頼頂くのが良いかと。少し時間をください」、というメールが午前零時過ぎに、次のメールはきっかり2時間半後で、「統一的な条件で見積を行うため、見積依頼書と仕様書を作成してみました。お手数ですが添付のファイルでご確認いただけますでしょうか」という文言とともにワードの添付文書(見積依頼書と仕様書A4版3枚分)が送付されていました。驚いたのなんの、という感じで絶句しました。この方は勤めから帰宅してまたパソコンに向かい、ワード文書を作成して、ついさっき眠りについたに違いないのです。よく報道されるあきれたエリート官僚と違い、ごく普通の国家公務員の責任感と能力の高さをまざまざと思い知らされた出来事でしたが、もはや過労死しないことを目が鵜ばかりで、申し訳なくてうっかりメールもできません。