2015年3月17日火曜日

「特許熱再び」

 前々回と前回の間は丸一週間たっていたことに気づかずにいました。その間一心不乱に特許出願申請書を書いていたのです。願書の1ページの最初に書く提出日は普通全部書き終えてから入れるのでしょうが、目標の日を決めないと出来上がらない気がしたのでまず日付を入れることにしました。この時期なら3月11日以外あり得ない。

 現物でなら簡単に説明できるものでも言葉と図で解説するのは並大抵ではありません。以前書いたものを下敷きにしようとしたら、今読むとよくこんなもの出したなというくらいひどい代物でした。形式はわかっていたので前より楽でしたが、ちょっと書いてはぐったりし食生活もいい加減、いつものジョギングも割愛しました。朝は午前2時に目が覚め、寝ている間にまとまってきたことを一気に書いてまた布団に入り、再び起きて、「僕の一番欲しかったもの」を聴いて涙を流してはパソコンに向かうという相当変な生活でした。

 特許電子図書館で閲覧できる出願された特許は、おびただしい数のユニークなアイディアの宝庫というか墓場のような様相を呈していますが、これを見ると人間に対するいとおしさが湧いてきます。自分のアイディアを占有したいという気持ちが全くないとは言いませんが、それだけでこれほどの情熱を傾けられるとは思えません。自分が思いついた発想を知ってほしいという欲求がまずあるのは間違いなく、ただ世の中には悪い人もいるから、自分のアイディアが悪用されそうになったり不愉快な奴に使われそうになったりするのを阻止する目的で出願する人もいることでしょう。

 とはいえ、出願には勢いが必要です。途中で気が緩んだらそのまま空中分解ということもありえます。思い出すのは、特許ではありませんが父が生前ごくまれに宝くじを買っていたことで、年末にくじ券を眺めながら「これがもうすぐうん千万円になるんだよな。」なんて言っているのを聞いて、私はよくそこまで楽観的になれるなとあきれていました。しかしある意味この手の妄想は有効で、それが出願への推進力にもなるのです。宝くじよりは希望が持てる感じですし・・・。私の場合はりくを目の前に座らせて、「これがうまくいったらアキレススティックを好きなだけ食べさせてあげるからね。」と話している場面を思い浮かべるのです。(アキレススティックはりくの好きな鶏のすじ肉のおやつです。)

 11日の早朝申請書は一応できたものの、その後読み返して単純なミスを見つけやっぱり今日申請するのは無理かなと思ったりもしました。結局お昼頃完成ということにして特許庁に出かけました。申請受付の職員が手際よく点検してゆき、途中で「あっ」と小さな声を上げて別の職員に何か問い合わせに行きましたが、戻ってきてから訂正を求められることはなくほっとしました。最終的に訂正は1ページ目に一か所あっただけで(それだけでも大変なことですが)、その場で一文字直してOKでした。今回オンライン出願を検討したのですが、住民基本台帳カードなどの準備が間に合わず見送ったのは正解でした。特許庁の職員というのはきっとみな弁理士の資格があるのでしょうが、最後に担当の女性職員が「ではこれでお預かりします。」と言って受け取ってくれた時どことなく笑いをかみ殺したような顔だったと思うのは気のせいでしょうか。面白がってくれたのなら来た甲斐があったと思いました。しんどかったけど楽しかった。これもあとから読むと、なんでこんなの出しちゃったのかなというようなものになるんでしょうけど。