2014年1月17日金曜日

「英国列車の体験から」


 英国で初めて鉄道に乗った時、一番驚いたことは乗客をコントロールする仕方でした。改札がないこともそうですが、列車の乗り降りについても仰天したことがあります。

 或る時、駅に到着して列車から降りようとして降りられなかったのです。中から開けるためのドアノブがなかったからです。それまではすでに開いたドアから乗り降りしていたので気づかなかったのですが、外から開けるドアノブしかなかったのです。車内に駆け戻り、
「ドアの開け方教えてください。」
と叫ぶと、乗客の1人が来て、ドアのガラス窓を引き下げ、そこから手を外に出して外のドアノブを回して開けてくれました。こんなやり方があったとは・・・と茫然としました。

 よくよく考えてみるとこれはすごい方法です。子供がいたずらしてドアノブを触り走行中に転落する心配はなく、意志を持って開けようとしなければ開かない仕組みになっている。なにより日本ではドアの開け閉めを自分ですることはほぼなく、またドアの窓ガラスははめ込み式で開閉するという発想がない。乗客の乗り降りのコントロールは運転手にゆだねられており、それは電気で行われている。いかに自分が人頼みで行動しているかということがよくわかりました。

 子供に対する配慮と確固たる人間の意志の尊重とを両立させるという点で、これ以上の方法はないとつくづく感心しました。電気も使いませんしね。こういうのを人間の知恵と言うのだなと、鉄道発祥の地で思ったことでした。今もこんな車両が使われているのでしょうか。