フェルメールとの出会いは二十数年前にさかのぼります。
絵画にほとんど関心が無かった私は、母が少しずつ買いそろえた画集に時折陶然と見入っている姿を、なかば当惑しながら見ているような子供でした。
ところが、オランダに旅行した折、話の種にと訪れたアムステルダム国立美術館でこの絵に出会ってしまったのです。一分の隙もない、完璧な絵でした。朝食の準備であろうか、牛乳を注ぐ揺るぎない動作。
「ああ、この女の人はこの行為を何百回も、いや千年も続けてきたのだ。」と感じました。この絵には、過去から連綿と続けられ、未来永劫永遠に続いていく人間の営みの確かさが宿っていました。
フェルメール詣での始まりでした。