*「青いターバンの少女」という方がわかりやすいかもしれません。
早朝のマウリッツハイスでした。
今から考えると信じられないようですが、その絵の前に私は一人で立っていましたその頃は、今ほどこの絵の名声が響き渡っておらず、その絵を独り占めすることができたのです。
その瞬間、私は文字通り、まさにこの絵に魅入られてしまい、トランス状態に陥りました。まったく動くことができなかったのです。
警備の方が緊張して私を見守っているのがわかりました。レンブラントの「夜警」に、スプレーが吹きかけられる事件が起きたのはこの翌年ですし(さらに前には切り裂き事件もありましたっけ)、イタリアのウフィツィ美術館が爆破されたのがその数年後のことで、世界の絵画や美術館はいつでもテロの対象になり得るからです。
どのくらいの時間か、私は他の人が来るまでこの絵の前でユーフォリアに包まれておりました。それからようやく正気に戻り、後ろ髪を引かれる思いでその場を離れたのでした。
。
