この頃中古の家電を購入することが多くなりました。家電の買い替えといえば十年ぶり、十五年ぶり、あるいは二十年ぶりということもざらですから、普通は現在の製品の方が目覚ましく進化しており、圧倒的に優秀です。しかし、個人にとって分野によってはそうとも言えない、昔の製品がよかったということもあり得ます。私はずっと同じシリーズのノートパソコンを使い続けており、自宅に3台、実家に1台所有し、大変快適に使用しています。これなどは、その製品を知り尽くし、必要十分の機能やサイズ・重量といった総合的な観点からその製品に満足し、使い勝手が良いからにほかなりません。一台が不調でも、別のものが用をなしてくれるので、安心して対処できます。この製品は現在は生産されていないので、おのずと中古品を購入して備えることになります。
最近2台続けて同じラジオを中古で購入しました。中古状態が「非常に良い」との商品説明の通り、ほぼ新品に近い状態のものを手に入れることができました。この製品の優れたところは、AM・FMラジオとTV音声が聞けることで、地域指定のプリセット編集で手間なく自動的にその地域のクリアな音声設定ができるのです。ポケットサイズではなく、手のひらよりは大きいが家に置くのに丁度よいサイズの家庭用ラジオです。とても良い製品だったので、続けて実家用に2台目を買いました。地方ではラジオに雑音はつきものという印象があったのですが、これなら都道府県別の地域設定があるので手間なくチューニングできます。日本の家庭用に特化した最適のラジオです。
視力的にテレビは私には必要がなくなり、そうでなくてもテレビのコンテンツが劣化の一途をたどる昨今、こんな製品はますます求められるはずなのに、生産終了とは残念でなりません。2台目を続けて買ったのは、この製品が生産終了である以上、中古でしか手に入れることができない製品であり、従って価格はどんどん上昇していくに違いないからです。事実、同じ新品に近い製品ながら、2台目は三千円ほど高い価格でした。
こういったものは他にも数多くあるはずで、良い製品なのにそれらが中古でしか手に入らないことに愕然とします。日本の企業に、こういった真に優れた製品を作る余裕がなくなっているのは、本当に残念で深刻な問題です。生成AIによるレシピと連動した冷蔵庫とか調理器具とかの話を聞くたび、「自分には縁がないな」と思う人は私だけでしょうか。家電とは人の生活を楽にしてくれる道具ですが、年を取った今、私にとっては「自分の頭で考えて便利なものはちゃんと使わせていただくが、振り回されたくはない。昔ながらの仕方でやっていくから巻き込まないでほしい」というのが本音です。世界を制するようなイノベーションを起こせるごく一握りの企業しか生き残っていけないような世の中は何か間違っています。