2023年3月14日火曜日

「住居を楽しむ」

  住宅関係の専門家が「自分の住居に完全に満足している人は5%くらいしかいないのでは?」というようなことを述べているのを聞いた覚えがあります。居住地の地理的・地質的状況、周辺の自然環境や近隣居住者を含む社会環境、交通や買い物の利便性、学校やスポーツ・文化的施設へのアクセス環境等といった外的状況から、個々の住宅の種類、建物の広さや堅牢さ、騒音や日照等の居住快適性、セキュリティなどあらゆる観点から評価するなら、「自分の住居に完全に満足」という人はそのくらいしかいないのかも知れません。狛江の強盗事件はその凶悪さにおいて高齢者を震撼させましたし、多数の死者を出したトルコの大地震は他人事ではなく、そう遠くないうちに必ず起こると言われている首都直下地震や富士山大爆発、温暖化や偏西風の蛇行による酷暑やドカ雪まで含めれば、確かに日本のどこでも安心していられる人は一人もいないでしょう。

 それにもかかわらず、多くの人は自分の住まいに「80%くらい満足」で過ごしているのではないかと思うのです。私自身は割と何でも受け入れられる質ですから、住居に関して何の不満もありません。もっとも、毎月必ず地理的移動を伴う変則的生活をしており、できるだけ両方の良さを活用するようにしているせいもあるかも知れません。基本夏は都会より朝晩が涼しい田舎暮らしで一息つき、冬は暖かな東京暮らしで体をほぐします。この頃は陽ざしの出た穏やかな日でも、思わず言葉を失くす吾妻連峰の偉容から吹く風はまだ冷たく、気が付けば『早春賦』を歌っています。いや、「今日も昨日も雪の空」ということはもうないと思いたい。ついでに移動生活を自宅に援用して、近頃は夏は北の部屋、冬は南の部屋で就寝するようになり、これはこれで気分も変わりとても快適です。

 地方と東京の違いが端的にあらわれるのが買い物の場面です。田舎の良さは新鮮な野菜と果物が直売所で安価に手に入ること(最近はハウスものですが、キュウリや顔ほどもあるカリフラワーの甘くて美味しいこと!)、東京の良さはとにかくお店が多く、ウォーキングを兼ねた毎日の買い物ルートを考えるのが楽しいです。不思議と毎日何かしら買いたいものがあり、店ごとにそこでしか手に入らないものを目指して出かけるのは嫌じゃないことに気づきます。やはり何かしら目的がないとつまらない。しかもそれが買い物ならなお楽しいというのは、生来人間が経済的動物だからなのかもしれません。大震災から12年経ち、この幸いな生活をいつまでも・・・と願ってやみません。