2022年8月3日水曜日

「コスパ・マインドに侵される職場」

  先日、友人から「用事はないけど、安否確認ね」との電話がありました。結局長電話になったのですが、猛暑にへばっていたところ、心配をおかけしたようです。また、別の友人がうだる暑さの中、1キロの梅と同量の氷砂糖をもって梅ジュースを漬けに来てくれました。昨年もらった手作り梅ジュースの3キロの瓶がうちにあったからです。申し訳なし。昨年の猛暑を乗り越えられたのは梅ジュースと福島の桃ジュースのおかげです。ずいぶんと友達に心配をかけてるんだな~とあらためて思いました。彼女からも話を聞き、また最近の本を読んで、いま学校はますます大変なことになっていることがわかりました。

①業務の煩雑化、膨大化がとめどなく進んでいること

一つはIT化関連、もう一つは進路指導関連で、特に後者はどこまでも面倒見の良い指導をすることがかえって生徒の弱体化を促していることを危惧します。

②多忙になり過ぎたため、必然的に仕事の押し付け合いや不手際が増加していること

当然の成り行きです。どうしても必要な仕事を厳選して、早急に仕事量を減らすべきです。

③職場のストレスが増大し、心ある人が鬱病発症の限界に近付いていること

仕事はできる人のところに際限なく集まるものです。特に誠実な人、全体の中での自分の位置づけを自覚している人の仕事量が増大し、限界を超えて心を病むことが多く見られます。心身と相談して適宜休むことが絶対に必要です。

④職業倫理の根本をビジネス・マインドに置いている人がいること

①~③までは私もよく知っている状況で、それがさらに進んだ状態として学校を覆っていると理解できます。④に関しては、あらゆることがコスト・パフォーマンスで計られるようになって出現した事象であり、さすがに十年前にはなかったように思います。学校がブラックな職場として知られるようになって教員志望者が減り、以前はあった教員採用試験の年齢制限もどうやらなくなっているようです。それ自体に問題はないのですが、中にはコスパ・マインドに染まりきって教職に就く人もおり、これがモンスター化する場合があるということです。教科指導ができない、不在になる時の代替人の手当てをしない、ごく普通の指示を「恫喝された」と言って仕事をしない、管理職の言葉をわざと曲解して「パワハラ」として教育委員会に訴えるなどが典型的な所業です。

 上記④に関して、介護保険がなかった頃、ギリギリまで有休をとって親の介護に当たっていたような事例を思い出しますが、当時の事情や最低限やることの水準を考えると、④は全く別の話です。現場の尻拭いをするのは同僚ですが、毎回相手が全く悪びれず当然の権利行使のように振舞うのでは気持ちが萎えてきます。これが続くと、きちんとやっている人が馬鹿らしくなるという非常にまずい雰囲気が横溢してくるのです。

 恐らくこの手法は、その人なりの金融工学で「どうすれば楽に稼げるか」を追求した結果、行きついた答えなのではないかと思います。破廉恥罪でもなければ辞めさせられることのない教員という立場は、その人にとって「最強の金融商品」なのでしょう。これまで様々なハラスメントをあぶり出し、認定してきた過程は社会に不可欠なものでしたが、今はその行き過ぎ(当事者がハラスメントと感じたら、それはハラスメントであるという認定)が問題ではないでしょうか。事実に基づいた適切な判断が必要です。教職と言う仕事は金融とは全くベクトルの違う職業ですから、このようなモンスター教員は一刻も早く辞めるべきだと思います。このような人が一人いるだけで職場は甚大な被害を被り、何より希望をもって教職に就いた若い人に途轍もない悪影響をもたらすからです。ほとんどの教員は「教える」ことの畏れと矜持をもって、日々ギリギリの生活の中で職務を全うしようとあがいていることは疑いの余地がありません。