2022年7月25日月曜日

「加減が難しい・・・今どきの働き方」

  人の働き方はこの50年で驚くほど変わりました。働き過ぎで「社畜」という言葉まで生んだ時代、特に男性には学校を出たら40年働く選択肢しかありませんでした。今では就活において「やりがい」よりも「縛られない自由」を重視して、就職先を選ぶ学生も多いと聞きます。どれほどの残業がありそうな職場か、事前にチェックするのは当たり前のように行われて、SNSで情報が共有され、場合によっては「ブラック」のレッテル貼りがおこなわれるとのこと、大変な時代になったなあと思います。

 新卒の学生を会社の気風に染めて鍛え上げる凄まじさは、聞き及ぶだけでも恐いものがありましたし、セクハラ、パワハラ、サービス残業(しばしば過労死を引き起こした)等が横行していた時代には心底ぞっとします。しかし今、それらの多くが法的に規制され、全く融通がきかない職場になって、逆に「ゆるブラック」と名付けられる企業も出てきました。労働時間がきちんと守られて、上司は優しく接してくれる、ノルマもきつくない・・・「ゆるくていいのだけれど、ここにいて自分は成長できるのだろうか」と感じる新入社員が、特に大企業で増えているというのです。この何とも言えない不満、あるいはそこはかとない不安はとてもわかる気がします。働き始めて最初の2~3年はどうしても自分に負荷をかけて仕事を学ばなければならない時期です。その時期に働くことの土台を教えてもらえないとしたら、職場にとっても本人にとっても大きな損失となるのは明らかでしょう。

  校内暴力で荒れていた頃、私が最初に赴任した教育困難校では12~14時間働くのは普通のことでした。そうしないと学校が学校として保てないからです。今なら間違いなくブラックな職場でしょうが、あれほど助け合って和気あいあいと団結した職場はありませんでした。労働時間を考えるとその状況がよかったとはとても言えませんが、或る種特殊な得難い体験でした。

 先日、通販の配達で初めてトラブルを経験しました。「本日中に配達します」というメールが来たので待っていたのですが、夜8時になっても来ない。念のため配達状況をチェックすると何と「配達完了」になっている。配送サービスセンターに電話し、「インターフォンを押した形跡がない、メールボックスに不在配達票が無い」ことを告げました。しばらくして、近所の配送センターより電話があり、「今、担当者を確認に向かわせています。ボックス内にあるのが確認できましたら、お持ちしてもよいでしょうか」とのこと。わざわざ来るのは大変だろうと思い、「宅配ボックスのナンバーとキーの解除番号さえ教えていただければ、こっちでやりますよ」と言ったのですが、「もうまもなく着きますので」とのこと、確かに荷物を持った担当者がやって来ました。「言い訳ですが・・・」と断りながら、メガネを壊してしまい数字を読み違えてインターフォンを押してしまったこと、不在だったので宅配ボックスに残したことを話してくれました。ありがちなことだと、目の悪い私は身につまされました。「大変なお仕事ですよね。遅い時間までありがとうございます」と申し上げて一件落着です。この配送所では配達ミスをした時の対処法がきちんと決められており、従業員はそれに則って失敗を克服し、成長していくのでしょう。電話をしてきた年配の女性は、とても丁寧に謝ってくださり、担当者が再訪問しやすいように配慮が見られました。きっとうまくいっている職場なのでしょう。「よい職場とは?」、「よい働き方とは?」という根本的な問題が今ほど問われている時はないと思います。