間欠的にコーヒーのことが気になる体質のようで、今その機が来ています。サイフォンはあるし、シャワードリップ式のコーヒーメーカーもあり、気が向けば電気ケトルで湯を沸かして手で淹れることもできます。コーヒーを淹れるのに何の不足もないのに、またムズムズしてきているのは何なのでしょう。これはおそらく、先日うっかり粉と間違えて豆を買ってしまい、ミルで挽いて飲んだことと関係があるに違いありません。「コーヒーは豆から挽いて淹れないと」とおっしゃる方もいますが、そこまでこだわりのない私は、初めてミル付き全自動コーヒーマシーンのサイトを覗いてみました。現在は、ミルで挽いてドリップするところまで完全に自動になっており、豆の挽き方の調節はもちろんですが、機種によってはミルの自動洗浄や沸騰浄水機能、真空断熱ステンレスボトルでの保温、果てはタイマー付きでコーヒーの香りでお目覚めタイプまで進化していることが分かりました。CMで流れている古参の外国メーカーのは値が張りますが、魔法瓶関係ではない日本のメーカーで、進取の気性に富む後発のメーカー数社がリーズナブルな価格帯で高性能のものを出しており、なんだかちょっとクラクラしてしまいます。
ミル付き全自動の難点は朝のコーヒーとしては音がうるさいことでしょう。私の場合、朝と言っても7時ではなく5時という時間ですから、自分でもうるさいと思うようなものを使うのは憚られます。現にこのところ豆を使用する時は、前日の昼間に豆を挽いて密閉容器に保存するという馬鹿なことをしていたのです。これは挽きたてとはいえないでしょう。朝コーヒーが飲めないのでは意味がなく、つまり私にはミル付き全自動コーヒーマシーンは使えないということです。
「う~ん、やっぱり新しいのは購入できないのか…」と、モッタイナイが抜けない私はがっかりしましたが、それでもまだムズムズするので、この事態を最初からもう一度整理してみることにしました。
①サイフォン(電気製品として出ているのはツインバードのみ?)で淹れる時は、4杯ほど作り、タイガー魔法瓶のサハラに入れて保温。(この水筒は売り出し当初からのお気に入り。どこへでも持ち歩いてきたので外側は傷だらけだが捨てられない。)
②シャワー式ドリップコーヒー(これは象印。思い出せないくらい昔からある)で淹れる時は、1杯ずつ、もしくは複数杯分を作り、保温は上記と同じ。
③お湯を沸かして手で淹れる時は、ほぼ1杯で飲み切り。
こうしてみると、自宅でコーヒーを飲むのに「何一つ不足はない」という先ほどと同じ結論に達しました。ただ一つ特徴的だなと気づいたのは、多めに作った場合はいつも断熱性の高いサハラに入れて保温していることです。
このあたりまでまとまってきた時に、全く別の観点が到来しました。「最近電気代が上がっているな」と感じていたのですが、これはニュースでも取り上げられるほどの大幅な上昇で、食品製造・調理関係業界や飲食店だけでなく、一般家庭でも大問題のレベルになっていることが分かりました。しかも、4月と7月に再度値上げされることが決まっているそうで、ここで私はハッと目が覚めました。っ毎日のことですから、「電力消費」という視点で製品を評価し、自宅でコーヒーを飲むときの徹底節電法を考えました。
①ミルは使わず、コーヒー豆はお店で挽いてもらう。
②1杯ずつ淹れることをなるべく避け、複数杯作って保温する。
③消費電力が少なく、保温効果が高い製品を選ぶ。
これらを総合すると、「真空断熱ステンレスポットのドリップ式」製品ということになります。「お前は出来上がったコーヒーをサハラに注ぐ手間さえ惜しむのか」という心の声が聞こえますが、「少し大き目の真空断熱ポットはあってもいいかな」という口実を思いつきました。「便利な機能があってもきっと使いこなせないしな」と思うのは、考えすぎてもう面倒になってきた証拠です。
さっそく上記の観点で探し始めると、見つかったのはそれまで選択肢に入っていなかった思いがけないメーカーでしたが、「あ~、やっぱりここに戻るのか」と納得もしました。それは百年以上前に創業したドイツのメリタ製のコーヒーメーカーです。この会社はペーパードリップシステムを発明したことで有名な企業で、俎上に上がった製品は使い方がシンプルで今までと変わりませんが、セットしたら真空二重構造のポットに注ぎだして保温してくれ、電源は自動でオフになる大変便利なコーヒーメーカーです。家のキッチンが狭いので、実はサイズも商品選びの大きなポイントでした。ポットの容量は大きすぎず小さすぎず、700mlというちょうどよい大きさが見つかり、さらにメリタの製品は同種の機能を持つ他社のものより小型でフォルムが美しく、これが決め手となりました。ミル付き全自動に未練を残しながら、「それはまた次回かな」と、今回はこれに落ち着きました。コーヒーを巡る探求の旅はまた何年後かに再開しそうで、物を捨てられない私のキッチンにはどれほどコーヒーメーカーがたまっていくことか。この道の奥深さもさることながら、十分足りているのに新奇なものに食指が動く自分の欲望を自制することが一番の難問なのでしょう。