新型コロナウイルスについて過去形で書いているのは、今の時点での自分の結論がまとまったので、後で読んで「全然違ってたな」と笑うため、大胆で馬鹿げた考えを排除せずに仮説を展開するためです。
何冊か本を読んで、2004年頃から流行した鳥インフルエンザA(H5N1)や2009年ころから流行した豚由来のいわゆる新型インフルエンザA(H1N1)亜型について知るにつれて、今回の新型コロナウイルスは、ウイルスの立場からすると満を持して登場したものだということがよく分かりました。思えばこのウイルスに対しては随分不可解な現象がいろいろと報道されてきました。簡単なところからさらってみます。
1.感染しても5人中4人は人に移していないこと。
2.無症状の人からも他の人に感染すること。
3.発症前の潜伏期間が長く(5日~10日ほど)、ウイルスは発症前が一番量が多く、強まること。
ここからわかるのは、「弱毒性の方がすぐに制圧されることなく、感染速度を速めて多くの人に感染させやすい」ということでしょうか。ウイルスは致死性を高くしないことで、広く速く感染拡大を起こし、生き延びる道を選んだようです。
次に私が不可解に感じたこと、疑問点などを思いつくままに書いてみます。
1.新型コロナウイルスは、「重症肺炎を引き起こす非常に危険なウイルス」という一般的な理解に対して、「本来風邪と変わらないウイルス」との見解を持つ医師が高名な研究機関の感染症専門医の中にさえいること。
→ そもそも「普通の風邪の15%ほどは何種類かあるコロナウイルスの一つである」ことと関係があるのだろうか。
→ 新型コロナウイルス流行時には季節性のインフルエンザに罹患する人がほぼ見られなかった。また、新型コロナウイルスは夏場でも感染拡大が見られた事実をどう考えたらよいか。風邪・季節性のインフルエンザ・新型インフルエンザ・新型コロナウイルスを分けて考えることにどれほどの妥当性があるのか。
2.ワクチン実験に用いる適切な動物を定常的に得ることができないということ。
→ ペットの猫や犬が新型コロナに感染したというニュースはあったが、どうもハムスターや特に猿やチンパンジー等の動物は自然には感染しないらしく、注射で無理に感染させてもうまく再現できないため、動物モデルの確立が急がれているようである。つまり、動物実験は人での治験とは別物と考えなくてはならない。これは何を意味するだろうか。
3.重症化例のほとんどがウイルス性肺炎であり、中高年のみならず若い人にも生じるが、何週間もその症状が消えなかったり、さらに全身の炎症による多臓器不全を起こしたりして、重篤な後遺症を残すのはなぜか。
→ このあたりが季節性のインフルエンザとは大きく違うところであり、これがなければさほど恐ろしい感染症ではなかったであろう。まず、呼吸器系については、日本をはじめ医療が整った国では、人工呼吸器およびECMO(エクモ)によって救われた命が多いことは非常に重要で特筆に値する。逆に言うと、このような処置が受けられない人々は無くなる可能性が高い。
→ 次に全身に現れる炎症症状については、いわゆるサイトカインストームと呼ばれる免疫系の暴走により、過剰に自分の体を傷つけ、多臓器不全を起こすとされている。肺についても単なる肺炎ではなく、抹消まで及ぶ炎症であることからも、重篤化する要因が免疫にあることは明らかであろう。
4.自然免疫では抗体が獲得できず、ワクチン接種によらずには抗体獲得が有効ではないとされるのはなぜか。
→ 自然感染により集団免疫を獲得しようとしたスウェーデンの試みが失敗したこと、また、感染した人の抗体が比較的短期で消失していたことなどが報道された。これは何を意味するのか。
ここから想像力を駆使して考えたことを書いてみます。科学的エビデンスはありませんが、敢えて言えば、これまで生きてきた自分の体自体がエビデンスです。
現代の社会は複雑系です。感染症医療に関してもこれが一義的な原因であるとか、唯一の治療法・解決法だとかいうものはあり得ません。それ以前に述べなければならないのは、第一に、日本ではPCR検査を徹底すると医療機関に人が殺到して医療崩壊を起こすということは理解するにしても、感染症に関して分母(感染者)と分子(重篤者・死亡者)が分からなければ、科学的な解明ができないでしょう。分母が全く分からない状態でどうやってウイルスの危険度を判定したらよいのかということです。
第二に、WHOは「世界保健機関」という名称に矜持を持ち、そのあきれるばかりの政治的立ち位置が、世界の保健を司るために役立っていないことを反省すべきでしょう。それをわきに置いても検討をお願いしたいのは感染拡大の段階分類の方法についてです。今のやり方の感染拡大の段階分類は、ウイルス自体の危険性の度合いに関わらず、空間的・地理的なものとして国同士の熾烈な駆け引きを背景に決定されるようです。この分類に或る程度ウイルスの危険度を反映させるべきではないでしょうか。日本ではパンデミックといわれてカミュの『ペスト』の再来かとパニックを起こしてから、「あれっ、インフルエンザみたいなもの?」という感じになってしまいました。
私は感染死者数の多い国というと、「ブラジルかな、次がアメリカあたりか」と思っていました。2021年3月24日時点での人口100万人当たりの累積死者数をまとめたものが見つかり(実際の死者数は10万人以上多かったというメキシコのニュースが入ってきたばかりなので、どれだけ実数に近いかという問題はありますが)、結果を見るとあっと驚くものでした。以下、2021年3月24日時点での人口100万人当たりの累積死者数(小数点以下切り捨て)
イギリス 1865人
イタリア 1758人
アメリカ 1647人
メキシコ 1548人
フランス 1426人
ブラジル 1414人
アルゼンチン 1215人
ドイツ 900人
南アフリカ 883人
ロシア 648人
カナダ 602人
トルコ 361人
世界 352人
サウジアラビア 190人
インドネシア 146人
インド 116人
日本 70人
オーストラリア 35人
韓国 33人
中国 3人
これはどう理解したらよいのでしょう。アメリカは国民の医療格差が大きいので、トップレベルの学術研究をもってしても感染者が多いのは理解できますが、イギリスが死者数一位とは驚愕の事実です。この表をじっと眺めると、カナダとトルコ、もしくはトルコとサウジアラビアの間に断絶があるように思えるのは私だけでしょうか。カナダより上に書かれた国はほぼヨーロッパと南北アメリカ。中には国内格差がひどく医療が行き届かない国や公衆衛生に無頓着な指導者がいる国など感染による死亡者が増えた理由が推測できるものもありますが、私はそれ以外の、世界基準で見て裕福な国、世界の医療をリードする国がこれほど多い死亡者を出していることに衝撃を受けました。iPS細胞の山中教授が言及していた「ファクターX」を想定するしかなさそうです。
表においてトルコより下に書かれているのはほぼアジアの国々です。オーストラリアは島国で当初から徹底したウイルス対策を敷いていたため、そもそもウイルスが存在していない。ウイルスがいなければ感染はありません。オーストラリア以外でも早期に感染を制圧した韓国、中国(そしてこの表にはありませんが、もちろん台湾)も同様でしょう。
ファクターXに関しては確かなことは何もわかっていませんが、いろいろなアイディアが提出されています。BCG接種国であるとか、アジア系はウイルスの増殖を抑えるDNAを持っているらしいとか、などが知られています。私は昨年5月11日に「感染症に強い国づくり」という題で何か書いたことを思い出し、読み返してみて、大きく間違ってはいなかったと思うのですが、こんなキツイことを書いたのかと仰天しました。その時の記述の中からいくつか取り出してみます。
①2020年5月時点では、「人口当たりに換算して米国の死亡者は日本の約50倍」と書いていましたが、1年近くたった2021年3月末にはその半分ほど(23.5倍)になっています。
②SF的仮説として、「小麦文化圏は死亡者が多く、コメ文化圏は比較的死亡者が少ない」と書きましたが、これは現在もあてはまります。そしてその理由を一部要約しながらまとめると、「穀物の大きな市場に目を付けたグローバリストが遺伝子組み換え食物、とりわけ穀物(小麦、とうもろこし、大豆など)を作り出し、強力な除草剤とともに販売したため、遺伝子レベルで人体に影響しても不思議はない。危険な除草剤をふんだんにかけて育てられた農産物に、これまた危険な食品添加物を加えて製造されたグローバルな食品を構造的・恒常的に食べさせられている貧困層のみならず、貧困層ではない40代、50代の男性で持病もない方がたくさん亡くなっているのは、体に良くない化学物質が濃縮された状態で体内に取り込まれる肉食の影響ではないか。こういったことの積み重なりがヒトの遺伝子を損傷することは十分あり得る」と書いていました。
私はウイルスとワクチンについて知るにつれ、また自己免疫疾患という持病の体験からして、新型コロナウイルスが細胞の或る種のDNAに深くかかわるものであると考えるようになりました。ウイルスは自分のコピーを作れる細胞にしか取り付かないということを熟慮して私が出した仮説は、「新型コロナウイルスとは、化学物質そのものもしくは化学物質により損傷した細胞遺伝子を感知して取り付くウイルスなのではないか」ということです。新型コロナウイルスを検知するためのPCR検査とはそもそも遺伝子組み換えや遺伝子研究に使われる検査ですから、ウイルスのそのものを検出できるわけではなく、検査したいウイルスの遺伝子を専用の薬液を用いて増幅させ検出する検査方法です。このウイルスの感染は個々人の細胞のDNAの状態に深く関わっているのは間違いありません。もっと言えば、化学物質によって損傷した(通常出ない状態になった)細胞が多ければ多いほど簡単に感染し、しかも重篤化するだろうということです。逆に細胞のDNAがよい状態であれば、生得的に持っている自然免疫で撃退できる場合も十分あると考えられます。
免疫不全状態を抱える人、免疫抑制剤を用いている自己免疫疾患を持つ人、手術その他で薬剤を投与されている方は、個々人の全身状態に応じて熟慮に熟慮を重ねた対応が必要でしょう。
高齢者の場合は一般的に加齢のため免疫力は落ちていますが、一方これまで経験した感染症や受けたワクチンが有利に働くことも考えられ、さらに病歴によって用いられた薬剤等が体に影響を残しているかもしれません。
まだまだ学びが必要です。今回読んだ本の中で一番印象に残ったのは、森下竜一著『新型コロナワクチンを打つ前に読む本』(かや書房、2021年2月20日発行)です。著者は大阪発の新型コロナウイルスワクチン(DNAプラスミドベースのワクチン)を開発しているアンジェスとタカラバイオのアドバイザーで、昨年6月から大阪市立大学医学部附属病院での治験契約の締結を発表した方です。ウイルスとワクチンのことがよく分かると同時に、ここまで書いていいのかなと思うようなすごいことをさらりと書いていらっしゃいます。これを読んでワクチン接種を決意せよというのは酷なのではないだろうか、というのが私の率直な感想です。ワクチンは打たないと決めている人はともかくとして、迷っている方はタイトルの通り、新型コロナワクチンを打つ前に読まれてはいかがでしょうか。
私の仮説を好き勝手に書いてきましたが、この観点から考え直すと冒頭で述べた新型コロナウイルスについての不可解な点がほぼすべて説明できる気がします。
(1)感染しても5人中4人は人に移していないのは、その4人は状態のいい細胞が多くて、ウイルスがあまり入り込めなかったためではないか。
(2)無症状の人からも他の人に感染する、また、発症前の潜伏期間が長く、さらに、ウイルスは発症前が一番量が多いのは、ウイルスが取り付こうとする個体のDNAの損傷状態を調べるのに時間がかかるからであり、その間は無症状であるが、いざすべての細胞の状態を調べ終わって取り付いた時が一番ウイルスが多いのは当然ではないだろうか。
(3)動物実験ができない(動物があまり感染しない)というのは、人間とはDNAが違うからかもしれないが、動物は人間ほど化学物質にさらされることなく生きてきたため、細胞のDNAがさほど傷つかずに済んでいるという理由も否定できないのではないか。
ウイルス自体は同じでも、それを受け止める個々人が細胞レベルで一つ一つ違うとすれば、発症の形態は千差万別になって当然です。そして仮に私の仮説が正しいとすれば、この感染症を終息させるためには人は生活自体を根本から変えなければならないという結論になります。そうでないとウイルスとワクチンのイタチごっこは増幅しながら続いていくだけだからです。人がさらされる化学物質は食べ物として口から入るだけではありません。大気汚染、水質汚染、居住空間が発する化学物質、洗濯や台所で日常的に使う洗剤、化粧品や染髪剤、衣料品その他ありとあらゆるものに関わっているのです。電子レンジで食品をチンすることで発生する化学物質について懸念する人もいます。こういったものを個人の力でどれだけ回避できるのか、懐疑的にならざるを得ません。
日本では2018年4月に種子法が廃止となりました。種子法は1952年5月に主に主要作物であるコメ、麦、大豆を公共財として守っていこうという基本的な考え方のもとに制定されました。地域性や食味を追求した「奨励品種」も多数誕生し、農業試験場などの研究機関で育てられた品種を農業振興公社や種子センターといった公的機関が栽培し、採種農家が増産するというしかたで、各農家に供給されてきました。日本の農業にとって非常に重要な種子法が廃止されたのは、ご推察の通り、農林水産省および政府がグローバリストの圧力に屈したためです。民間の活力の活用云々と体裁のいいことを言っても、種子が市場経済のただなかに投じられればどうなるか知れています。結局国民はどうなってもいいと思っているのでしょう。どんな付帯項目をつけていたとしても、最終的に安価な遺伝子組み換え作物に取って代わられると考えると、胸を搔きむしる思いです。どこまで愚かなのでしょう。いや、知っていてやっているのでしょうから、恐ろしく邪悪というべきです。