2021年2月2日火曜日

「37.0℃」

  ツイッターの内容は、「○○がきれいだった」、「××がおいしかった」、「△△して楽しかった」といったごく感覚的なものが多いと聞いたことがあります。究極のところ、自分の身体で感じる感覚を何より優先するのは、人間のさがと言えるでしょう。帰省中は私にとって、コロナ問題よりも天気や気温の方が重大関心事なのと同様です。

 今年になって初めての持病の発作が起き、しばらく寝込みましたが、それでもよかったことは、いつもと同じ症状だったのでコロナの心配をしなくてすんだことです。じっと横になって寝ているしかない病なので(寝ているだけで治るというのは或る意味すごいことで、睡眠による治癒力を実感する時でもあります)、こういう時は世界で何が起きていようと自分の病状以外のことは考えられなくなります。本当に人間とは弱いものだと思います。

  突然始まり、適宜水分や栄養を摂りながら寝ているとだんだん治るという経過にはすっかり慣れましたが、今回の問題は通院までに治るかということでした。夕方に歯医者の予定が入っていた三日目の朝、起き上がって歩いたり動き回ったりするのはできるほど回復していましたが、体温を測ると37度を少し超えていました。歯医者は近くなので行くのは問題なさそうでしたが、昨今は治療前に以前はなかった検温があります。がっかりしたのは、その日、被せ物をした前歯が出来上がってくるのを心待ちにしていたからで、それまでろくに物が噛めない状態だったのです。当初、物を噛むのは奥歯が主で、ほとんど影響ないだろうと思っていたのですが、さにあらず、ふたのついた仮の前歯では全然噛めず、うどんの日々が続いていたのです。

 夕方までは時間があると思い、体温を秤ながら寝たり起きたりしていると、体温は36.3℃から37.0℃あたりを行ったり来たり。歩いている間に熱が出るかもしれないと思いつつ、その時は次回の予約を入れて来るだけだと思い直し、歯医者へと向かいました。結果は36.6℃、無事、治療室へ入れました。歯医者の治療を受けられるのがうれしいとはめったにないことですが、思わず饒舌になってしまい、「前歯って単純な上下運動じゃなくて、複雑な動きをするんですね」と、噛めなかった体験から分かったことを述べると、歯科医も満面の笑みで「そうなんですよ」との相槌。丁寧に下の歯との嚙み合わせを調整してもらい、前歯を入れてもらうことができました。今日は歯医者に行ける幸せを学ばせてもらいました。

 翌日は眼科の視野検査、同じ週に診察が入っていましたが、こちらはキャンセルにしました。場所が遠いので外出を控えた方がよいと思ったのと、体調が万全でない、目の状態に変わりがない(行っても見えるようにはならない)等の理由です。受付の人が親切で、半年くらい先の予約を取れるよう当たってみるとのことでした。ありがたし。

 老人が集まると病気自慢が始まると言いますが、誰でも自分の体のことは詳細に話せるものです。歳をとるとそれだけ以前とは違う体の不具合が次々と出てくるのです。これは本人には困った悩みでも、その症状が想像できない若い人にとっては、聞かされるのは大変でしょう。だから病気自慢は老人同士でしかできない。逆に、他人の病の体験談を聞くのがそんなに嫌ではないということは、それだけ歳をとったということになるのかもしれません。