2020年3月2日月曜日

「通院も命がけです」

 奥歯の被せ物が取れてしまい、歯医者の予約を取ろうとして、受話器に向かう手がふと止まりました。口腔内の治療なんて今一番リスクのある行為なのではという懸念が頭をよぎったからです。幸い中の詰め物の方は無事だし、もう一方の奥歯も健在。ウィルス感染の可能性よりは虫歯の方がいい・・・と放置したのが二月中旬。そこからドドドッとウィルス感染の社会状況は悪化し、今はとても奥歯の治療どころではなくなりました。

 そのうち眼科の通院日が来て、行こうかどうかかなり迷いました。私の場合、定期健診的な意味合いしかなく、行っても治らないことははっきりしているからです。今一番ウィルス感染の危険があるのはやはり病院でしょう。ほとんど予約キャンセルに傾きかけたのですが、ふと前回の来院はいつだったかなと調べてみたらなんと十月。熟慮の末、やはり行くことにしました。キャンセルした場合、次にいつ予約が取れるのか、来院の間が空きすぎた時の対応はどうなるのかなどを勘案すると、小中高の一斉休校要請が出て大騒ぎになっているものの、それは新たに判明した爆発的感染拡大に関する事実ではありません。考えたくないことですが、その日を逃してあとで「あの時行っておけばよかった」というほど状況が悪化しないとも限らない・・・。

 かくして、二重マスク(一枚は七年ほど前に購入した粉塵用。間違って買ったもので、父に「要らない?」と聞いて「要らない」と言われたものを保管しておいたもの、何でも取っとくもんですね)、眼鏡の上にサングラス、顎下まで閉められるファスナー&ボタン付きの表面つるつるコート(花粉対策だが、ウィルスにも有効かもという素人考え)という自分なりの完全防備で出かけました。外出に併せ他の用事も済ませようと銀行、大学図書館にも寄り、普段なら学食で昼食をとるのですが、この日は断念。持参したお弁当(一口大に切ってラップし、そのまま食べられるようにしたサンドイッチ)を外のベンチでクスノキの巨木を眺めながらいただきました。まだ頬に当たる風が冷たかったけれど、たまにはいいものです。

  その後向かった病院は、最初こそ若干患者が少ないかなと思われましたが、どんどん人が増えていつもと変わらない席取りゲーム的様相を呈しました。日本の人ってやっぱり真面目。ほぼ全員マスク着用、洗面所で異様に丁寧に手洗いしている人も見かけました。いくつかの検査と診察では一度もマスクを外さず受診。室温が高かったので、薄手の内着二枚を鞄にしまって調節し、一番上はずっとつるつるコートのまま通しました。驚いたのは会計の待ち時間が短縮されていたこと。以前は待合所に人があふれ相当待たされましたが、これも新型コロナ対策なのでしょうか。拍手!

 それでもぐったり疲れ果て帰りのバスでは少し酔いました。でも玄関開けて家に入った途端、完全回復。やはり気の持ちようは大事と再認識しつつ、すぐ風呂を沸かし、髪を洗い、着衣を全て放り込んだ洗濯機を回しました。湯船につかりながら、できることはやりきったという清々しい気分でした。今年は正月早々持病の発作で寝込んだので「ついてないなあ」と思ったのですが、あれが今出ていたら、まさかと思いつつちょっとドキドキだったかもと、ぼんやり考えました。持病のタイミングといい、「取って置き」のマスクといい、誠に何が幸いするかわかりません。