2020年2月19日水曜日

「感染拡大とともに」

 新型ウィルスの感染拡大はこれからが正念場という段階に入りました。こう言っては語弊がありますが、今回の出来事は医学的レベルとは違った意味でいろいろなことを考えさせてくれます。一言で言うと、我々は論理的な思考力を失っている、もしくは失ったかのように振舞っているということになります。何しろこの件がクローズアップされる前から、観光という形で隣国から何千、何万もの人が訪れているのです。或る日を境に突然始まったものではないと考えるのが妥当でしょう。しかもこのウィルスの検出には時間がかかり、また検出できる機関も限られているのです。さらにまずいことにこのウィルスは潜伏期間にも他へ感染し、感染しても症状が出ない人がいることです。(ひょっとするとこれは、「検査結果の精度は絶対的なものではない」というやむを得ない事情によるのかもしれません。)感染しても症状が出なければ、その人にとってこのウィルスは脅威ではない。また、マスク不足から「感染者が飛沫を飛ばさぬようマスクをするのは有効だが、感染していない人はマスクをしても意味がない」とのアナウンスが行われましたが、自分が感染しているかどうかは調べてみないと正確にはわからないのですから、この説も的を得ていません。

 政府が手配した飛行機で帰国した方々が千葉のホテルで2週間過ごし全員陰性で帰宅できたことに胸をなでおろした人も多かったでしょう。一方、乗員・乗客三千七百人という動くホテルのクルーズ船では検疫期間中に明らかな船内感染が広がり、混迷を極めています。不思議なのは発症した人は下船できるが、症状のない人は船内に留め置かれるという事態です。不謹慎な言い方ですが、軽く発症して指定医療機関で治療してもらえたら患者には一番負担が少ないでしょう。船に一人の罹患者がいたため、乗員・乗客は多大な被害を被った方々なのに、なおかつ無症状の人々の経過観察受け入れ先となった地域では住民運動が起きたり、心無い人からの中傷が発生しました。私見では、もう市中感染が起きてもおかしくない状況なのですから、集まって反対運動をすることの方が危ない気がします。立場が逆転した時の自分が全く想像できていないのです。感染者が「おらが町」に来るのは心配だと言っている人は、「あなたも感染者です」と言われた時、どういう態度をとるのでしょうか。

 政府から要請を受けた指定医療機関は感染患者を受け入れています。福島での受け入れは、一昨日までに五人、昨日は一人と淡々と報道されました。少なくとも私は、この方たちは原発汚染者とみなされる福島に住む人々と同じなのだと感じています。自分たちが使うわけでもない電気を作るため原発事業を押し付けられ、全電源喪失の爆発時にも政府が知り得た情報(風向きによる放射能の拡散)を知らされず身を守れなかった者たちなのです。現在起きていることは、日本が観光事業の急拡大を称揚して利益を上げ、あるいは一円でも安い物を作ったり手に入れたりするためにグローバリゼーションを推し進めてきた結果だということを認識する必要があります。新型ウィルスの問題は、それが外から突然到来したものではなく、我々の内部から生じたものだと自覚する以外、これからの課題を乗り越える道はないように思います。とりあえずこのウィルスの攻略のカギは、「感染しても発症しない人がいる」ことでしょうか。免疫力を上げるのが最も効果的な対処法かもしれません。