2018年7月19日木曜日

「福島の桃」

 先日友人に、福島の桃の品種を商品名にした果汁100%のジュースをいただきました。都内のJRのどこかの駅の自動販売機で売られているペットボトル入りの飲料とのことなのですが、彼女自身はまだその自動販売機を目にしたことはないということでした。では、どうやって手に入れたかというと、これを飲んだ人が「この世のものとは思えないおいしさ」という感想をSNSで発信して広まったのが始まりで、ネットで探して一箱48個入りのものを注文したというのです。まだ味見してもいないものをこれだけ購入するのですから、福島の桃の信頼性は高いと言えるでしょう。

 さて、家で冷やしていただいた私の第一声は「うん、確かにあかつきだな」というものでした。白鳳とともに、私が子供の頃からある福島の代表的な桃です。種がカパッととれるネクタリン系の品種もあったのを覚えていますが、甘さはやはりあかつきにはかないません。子供にとって「旨い」はほぼ「甘い」だったのですが、あの頃の桃の飲料で、子供でも甘いと感じていた某菓子メーカーの缶ジュースには、ギリシャ神話の神々の不老長寿の酒の名がついていました。桃のジュースと聞いてあのドロッとした甘い飲料を思い浮かべていたら、いただいたものは完全に非なるものでした。すっきりストレート、クリアなリンゴジュースの桃版です。友人の話では、冷やした炭酸水で割るとさらにおいしいとのことでした。

 帰省してから東京での疲れがどっと出て具合が悪かったのですが、直売所で買った桃を食べて寝ていたらよくなりました。この時は暁星(あかつきから生まれた品種)で、小ぶりでしたがなんと6個入280円、とても甘くておいしくいただきました。こんなに元気が出るとは、やはり桃には何か特殊な栄養素が秘められているに違いありません。そう言えば、果物から生まれたのは桃太郎であって、他の果物ではないし、『古事記』で黄泉にイザナミを迎えに行って恐ろしいものを見てしまったイザナギが、化け物たちから逃げる時、最後に投げつけて命からがら逃げおおせたのは桃の実のおかげでした。やはり古来、桃には邪気を追い払う不思議な力があると信じられてきたのかもしれません。