2017年1月9日月曜日

「放牧」

 某人気グループが「放牧宣言」をして、グループとしては活動休止に入ったという報道がありました。三人が牛の着ぐるみを着ていたことで、今の若者の希望とする生き方がどんなものかを垣間見ることができる気がしました。馬と違って牛は動作がゆっくりです。放牧・・・のどかな言葉です。誰かが見守ってくれていて、その目配りの中で思い思いに過ごすというのは安心で快適な状態です。実際、メンバーはそれぞれのペースで個人活動をするようですし、十年間一緒に活動してきて、できなかったことも様々あるのでしょう。もう急かされたくはない・・・これが現在、若者にかぎらず多くの人の本音であることは確かです。

 私が放牧と聞いて思い出すのは、やはり教師として勤めていた時の校外学習でしょう。職員会議で計画を説明していた或る教員が、「・・・それから、鶴岡八幡宮で生徒を放して・・・」と言った時に、みな吹き出してしまったのです。それ以上うまい表現がなかったからです。放し飼いか・・・、よいではないか。教師も生徒もゆったり過ごせる。締め付けないからお互い幸せ。「いついつまでに戻って来てね」と言っておけば、必ず戻ってくるのです。置いていかれたくないですから。 これがたぶん人にとって一番幸せな状態なのではないでしょうか。私なりに敷衍すると、安心できる神の手の中でしたいことをする、と言っても、ちょっと見たことのない花を見に行ったり、珍しい草を食んでみたりするくらいのことです。柵の中なら安全ですから。

 そう言えば、うちにも放牧されてる子がいるなあ。家中全部その子のいられる場所で、そばにいる人間に要望を言えばだいたいかなえてもらえます。一人でいたい時は和室で日向ぼっこしているし、おやつをもらった時には舐め舐めカリカリしながらカウチポテトを楽しんでいます。しつこくすれば絶対言うことをきいてくれる人間がそこにいるのです。あ~、放牧って幸せだねえ。