2016年12月6日火曜日

「紅春 97」

りくが二階に上がれるようになってよいことがあります。兄への伝令の役目です。朝いつもはもう起きる時間なのに兄が起きてこないことがありますが、急な日程変更で休みということもあり得るし、私が起こしに行くようなことではありません。しかしごくまれに目覚ましをかけ忘れて大失敗ということは誰にでもあることなので、こういう時りくは役に立ちます。


 階段下まで一緒に行って、「行って来て。」と言うと、りくは階段を上り始めます。しかし自分の意思で行くわけではないので、途中の踊り場で振り返り、「やっぱり行くんですかい?」と聞いてきます。私が「行って、行って。」と両手で合図すると、りくはまたのぼり始めます。そのうち「なんだりく、起こしに来たのか。」という声がして、やがて役目を終えたりくと、少し遅れて兄が降りてきます。りくに起こされて怒る人はいないのでとても平和な朝が始まります。