高校の頃、「あと40年もすると老人がこんなに増えちゃってるのね。」と話しながら、ふと自分たちもほぼその中にいると気づいて笑えない話になったことがありました。今は60歳と言っても老人扱いしたら失礼でしょうが、一応還暦ですからこの年齢を基準に考えてみます。今現在は60歳以上の人口は国民の三分の一くらいでしょうが、ざっと推測してこれが30年後には二分の一になるでしょう。今でさえ混雑時にはシルバーシートに座りきれないほどの高齢者が若者同様立って乗車しています。まもなくシルバーシートそのものが無意味になって消えるでしょう。国民の半分が60歳以上となるこの頃から、それまでは微減だった人口が急激に減り始めるはずです。シルバーシートの代わりに若い人や子供専用のシートが確保されるようになるかもしれません。
そこからさらに40年経つ頃(すなわち2080年代)には、ざっくり見積もって日本の人口は今の半分くらいになるのではないかと思います。高齢化はいいとしても、問題は少子化です。これまでと同じ仕方で子供が生まれると仮定すると、この頃にはもう十代以下の子供は人口の一割もいない。子供を産める年代の女性の数が今の半分近くまで下がるのでいたしかたのないことです。それから30年すればもう子供は生まれなくなるでしょう。高齢化は防げませんが、少子化の方は本当になんとかする気があればできていたはずなのです。小さな子供を抱えて、「入れる保育所がない。子供は少なくなんかないのよ。多すぎるのよ。」と叫んでいた同僚もいました。結局女性に負わせてきたつけを払わなければならないのです。
将来の展望がどんなに陰鬱でも、この問題に本腰が入らない本当の理由は、一つには「人口問題に口を出すような国はろくな国ではない。」という嫌悪感であり、もう一つは「そんな長期的な視点から国の将来を考えても自分には何一つ益がない。」という実際的な感覚であろうと私は思っています。問題の性質上短期目標を設定する要請がまずないし、遠くを見すぎても気力がわかない。だってそのころもう自分はいないもの・・・・。実際、30年後どころか10年後でさえ、世界がなんとか機能して保たれているのかどうか私には全く想像がつきません。高齢化などという贅沢な問題で悩む前にもっと恐ろしい事態が世界を席巻しないと誰が言えるでしょう。