先日ラジオでファイナンシャル・プランナーの方が、「12月こそ家計の棚卸を」という話をしていて、「毎月の支出を一つ一つ把握している人は少ない」と言うと、聞き手のアナウンサーは「そうですね。電子決済は便利ですが、その時限りで、後で電子明細をチェックしたりしませんね」と答えていた。私は「みんなそれで不安にならないのか」と少しびっくりした。紙の通帳や明細書が電子のものに変わり、そのチェックがしにくくなったのは事実である。いちいちログインしてみなければならず、場合によってはそのたびに2段階認証を求められ、面倒この上ない。
決済情報が一つにまとめられていればまだよいが、電子決済の方法はたくさんある。最近は量販店ごとにクレジットカードと紐づいたカードを勧めてくるので、そのたびに作っていたら大変なことになってしまう。家計簿アプリなるものもあるそうだが、私に使いこなせるわけがない。個人情報もどこから漏洩するか分からないため、私はエクセルで簡易的な家計簿をつけている。
月初めに、まずメインとして使っているクレジットカードでの支払い明細をダウンロードする。これによりカードによる今月の支出(主に公共料金、電子マネーのチャージ代、クレジットで支払った新幹線料金、医療費、通販購入品の代金など)がわかるので、予め作成した家計簿欄に品目と金額をざっくり写しておく。あとはこの下に、日々の買い物ごとに今月の支出を書き加えていく。とはいえ、いつも行く5、6店舗は、店ごとに何を買うかは大体決まっているので、実際に買った細目は省く。つまり、日付と店名と値段を入力するだけである。最後に「食品」なら「2」、「雑貨」なら「3」というように、「交通費」「医療費」「通信費」、「公共料金」等々の品目を表す数字を入れておく。
月末にはそれぞれの品目の合計が出るようになっているので、これを別ページに貼り付け、12か月揃えば一年間の品目別支出が分かる。退職してからこの方法でずっと家計簿をつけている。人は経済活動をしない日がほぼないので、家計簿は紛う方なく経済的観点から見た「日記」になるし、年次による変化も一目瞭然である。ただ、確かにこれは、時間に追われる方々には無理かもしれない。私も勤めていたころはとてもそんな時間はなかった。しかし、今の人たちはIT技術を使って適切な家計把握をできるはずだから、各自が自分に合った方法で、年に一度の棚卸をすればよい。棚卸と言えば、そろそろ来年の確定申告の準備をする時期、慌ただしさが募る師走である。