2024年8月23日金曜日

「イヤホンの形」

  生活するための情報の多くを耳から得るようになって、イヤホンは私にとって欠かせないものになり、ヘッドホン型のものから耳の中に入れるものまでそれぞれ数種類をいつも手元に置いています。ヘッドホン型は3m以上とかなりコードが長く、パソコンを音声ソフトで読ませながら家事をするのに便利ですし、耳に入れるタイプのイヤホンは1mから1.5m程度の長さのコードで、それぞれ携帯用音声読書器を胸ポケットやタスキ掛けにしたポーチに入れて聞くのに最適です。

 しかし長年の課題として、なかなか体に合うイヤホンがないという問題を感じています。ヘッドホン型では非常に軽量の、頭を押さえつけないタイプを使っていますが、どうも耳の形に合わせて装着するよりも逆向きに頭に置く方がしっかり固定できます。別にどの向きに当てなければならないという決まりはないので構わないのでしょうが、一般的に想定されている向きで使用するとずり落ちやすいことを考えれば、自分の頭の形は標準からずれているのかもしれないという、これまで考えたこともない疑問が浮かびます。

 耳の中に装着するタイプのものはなおさらです。小型ラジオなどに付いてくるおまけのような片耳(もしくは両耳)用のイヤホンをインナーイヤー型イヤホンと呼ぶそうですが、これは耳の表面の耳介(外耳孔を囲んでいる貝殻状の突起)と呼ばれる部分にイヤホンの音の出る部分を引っ掛けて装着するタイプです。私はこのタイプのイヤホンが耳に合った例がありません。だいたい「接着面が少なく外れやすい」という以前に、「こんな大きなものがどうやって耳介に収まるのか」と思えるほどのサイズで、最初は「使用法が違うのか?」と謎で仕方ありませんでした。推理小説などで犯人の耳の形が分かった場合、耳の形は一人一人違って、指紋に匹敵する証拠能力があるという話が出てきますが、納得のいくことです。このタイプのイヤホンはせっかく付属していてもまったく無駄になるのが残念ですが、いずれにしてもこの形状では音漏れするに違いなく、少なくとも外では使えません。

 一方、外耳孔に深く押し込むようにして使用するタイプのイヤホンをカナル型イヤホンと言うそうですが、こちらは音の出る部分にシリコンのカバーが付いているのが一般的です。初めてこのタイプのイヤホンで音を聴いた時には、外部の音が遮断できるその密着感に感動したものです。仕様がしっかりしたものは左右で形状が違い、外耳孔に合わせて描くゆるやかな弧のおかげで上手くフィットするようです。集中して何かを聴きたいときにはこれに限ります。逆に、散歩中に聴く場合などは片耳は外しておいた方がよいかも知れません。音楽を専門に聴く方の中にはインナー型を愛用する人がいるとのことですが、個人的には私はカナル型の愛用者です。しかしこれにも問題があります。通常交換できるシリコンのサイズは大中小の三種類あるものの、私の場合大きいサイズを用いてもなお、耳孔の間に少し隙間ができて外れやすいのです。ここに至って、残念ながら、恐らく私の耳の形状やサイズは標準から外れているのだろうと結論せざるを得ません。身長など目に見えるサイズで標準云々を気にしたことはありませんでしたが、普通比べることのない部分では思った以上に個人差が大きいこともあり得ると自覚した次第です。この歳になってこんな身近なことで新たな発見があるとは思いませんでした。