前回、買い物難民化する地方の状況について書きましたが、数日前にヨーカドーネットによる我が家への最後の宅配がありました。配達の方に、「もうこのサービス無くなるんですね。途方に暮れてます。皆さん困っているんじゃないですか」とお尋ねすると、やはりみんな困っているとの返事で、特に高齢のおばあちゃんからは「本当に困る。責任取ってください」と言われたとのことでした。それはそうだろう、車を運転してくれる人がいない高齢者はもうお手上げ、どうすることもできないでしょう。これまでこのスーパーは地域の台所を賄い、相当数の雇用を創出し、そこまで行く足のない人にも宅配という手段で必需品を届けて来たのです。地域に不可欠の大規模スーパー全店の県内閉店を決定するなどという暴挙に出たセブン&アイ・ホールディングスは人道上許されないことをしたのです。やりたい放題の大資本は長い時間をかけて出現した者で、これをどこかで阻止できなかったことが悔やまれます。
これとは別に実家周辺の特殊状況もあります。何しろ区画整理など関係なしの昔からの小さな集落ですから、家の前から奥へと続く道は車がすれ違えない狭さ。聞いた話では途中のお宅から先は救急車が来てもそこに停車したまま、救急隊員が担架をもって駆けて行くと言います。当然、市街化調整区域。すっかり周囲の発展からは取り残されてしまいました。
ネットで探すと宅配サービスとして残すはパルシステムのみ。これは地方在住の民にとって最後の命綱となりそうです。ただ、注文は一週間単位で行われ、注文の有無にかかわらず週ごとに費用が発生するところが、たまにこの地を訪問するだけのよそ者にとっては難点です。しかし毎週かかる費用も協同組合運営には不可欠なものなのですから、大資本の横暴が行きつくところまで行った今となっては、お互い必要な費用を負担し合って共同体の生活を維持していくという方向に変わっていくのだなと感じています。もはや巨大資本に対抗するには弱者が集って助け合う協同組合方式しかないのでしょう。個人的にはまだしばらくは、兄の車に頼って買い物に行くつもりですが、パルシステムをいつか有り難く使わせていただく時が来る気がします。
まったく別件で起きているもう一つの問題は、周辺に住む猫の縄張り争いです。実家の愛犬りく(父は「警備部長」と呼んでいました)がいなくなって、パトロールによる撃退力が極端に低下したため、うちの庭は猫が我が物顔でやりたい放題しています。東には○○さん宅の猫が、西には△△さん宅の猫が、それぞれ複数匹飼われており、ちょうどうちの庭がそのぶつかり合いの最前線になっているのです。とりわけその落とし物に業を煮やした兄が先日猫除けシートを敷いたのですが、今後効果があるでしょうか。今起きている変化は一見何でもないように思えますが、巨視的に見れば周辺の人員(それに伴う犬員)減少がその原因の低層にあり、それが地勢学的リスクとなって顕在化してきたのです。買い物難民問題にしても、動物同士あるいは人と動物の生活圏争いにしても、全国の「地方」で、このような事象が続発していることでしょう。