バスは公共交通機関、個性を発揮する場はなさそうに思えますが、これがそうでもありません。先日、10月末の日曜の渋谷は言わずと知れたハロウィンの厳戒態勢、私は委員会の冊子作りで教会を出たのが午後5時くらいになりました。いつも乗るバス停は既に警察車両で封鎖されており、「えっ、どこから乗ればいいの?」と掲示を見ると、どうやら宮下公園まで行かなければならないらしい。池袋方面から来るバスは駅の手前の宮下公園でUターンする形で戻るよう、一時的に変更されているようでした。
宮下公園まで歩いて行くと折しも向こうから来るバスが左折していってしまい、バス停で次に来たのは早大正門行き。乗らずに待っていると、運転手さんが「池袋行き待ってるの。たぶん反対側の宮下公園バス停に泊っているから乗りなさい。保証はできないけど、〇分発だから急げば間に合うはず」とのこと。たまたま池袋行きを待っていたもう一人の方と乗り込み、どきどきしていると、バスは左折して反対側の宮下公園目指して走り、「あ、信号変わったからもう大丈夫。ほら、前のバスだよ」と言って降ろしてくれました。おかげで一つ前のバスに乗れました。「ありがとうございます。助かりました」とお礼を言って降りたことは言うまでもありません。考えてみると、また十数分で次の池袋行きは来るのですから、早大行きのバスの運転手さんはバス停をそのまま通り過ぎることもできたはずです。恐らくその日が特別なルートの日になったので、気を利かせてサービスしてくれたのでしょう。有難いことです。
もう一つ、最近渋谷―池袋館で体験したことですが、どこのバス停だったか、高齢の男性二人が乗り込んでくるなり口喧嘩を始めました。前からもめていたのか、乗る時に出合い頭に揉めたのか経緯は分かりませんが、「何を~」、「何だと~」と結構激しく言い合っており、周りの人は遠巻きに見ています。バスは発車できず、運転手さんが「席に座ってください」と言っていました。こんなことは長年都バスに乗っていますが初めてです。間をおいて、運転手さんは「席に座ってください」を重々しく繰り返しましたが言い合いは止まず、「いつ動くのかなあ」と思い始めた頃に、運転手さんから「降りてください」と鶴の一声。辺りがシーンとなったところへ再び「降りてください」。私は二人が逆切れしないか心配でしたが、何と二人は降りていくではありませんか。バス内は運転手さんのフィールド、ちゃんと指示に従ったのはエライ。また、関係ない人に迷惑かけちゃいけないという、暗黙のルールも効いていたのかも。この辺が日本なんだなと思いつつ、帰路につきました。
全国で運転手不足が報じられています。本当に大変なお仕事だと思います。運転だけに集中できればまだしも、料金の確認や乗客の安全管理など、心を砕くことが多すぎます。しかし、バスによって本当に助けられ、感謝している人が大勢います。階段も上らず地下にも潜らず路面からすぐ乗れるバスは本当に便利で、これが無くなったらと思うと私には死活問題と言っていいほどです。私はバスの前の方に乗っていた時、乗り込もうとして荷物もろとも転んでしまった老婦人に「大丈夫ですか」と手を出して助け起こしたことがありますが、そういうことは日常的に見ることです。乗客同士もごく普通に助け合うことで、少しでも運転手さんの負担を減らすことになればと思います。今一番考え中なのは、運転手さんに危害が及びそうになった時にどうしたらいいかということです。バスジャックじゃないけれど、運転手さんあってこその公共交通なのですから、この部分の安全確保が何より大事です。