加熱の最中、突然エラーの表示が出て、電子レンジが壊れました。ネットで調べたところによると、使用中のP社の電子レンジには構造的に問題があるらしいことを何人かの人が指摘していました。思い起せば、私と電子レンジの付き合いは1980年代後半の頃からで、それはまさしく日本の半導体産業の絶頂期、世界市場シェアの過半を占めていた頃です。私にとって初代の電子レンジは「働く女性には必需品だから」と母が買ってくれたものでした。当時まだレンジは、安月給の単身者などには贅沢品の範疇にあり、自分としてはどうしても必要とは思っていなかった覚えがあります。おぼろげな記憶では今はなき(P社の完全子会社となって消滅した)S社の製品で、とても大型で高価でした。一人で抱えて持ち上げるのは困難なほど重く引っ越しに難儀しましたが、性能は非常に良く、20年以上働いて家事を楽にしてくれました。
このたび壊れたのは二代目で、購入したのは恐らく13~14年前です。もう少し後の比較的最近の製品を購入した人のレヴューでは、三年で壊れたという投稿もあり、それと比べれば私のはよくもったというべきなのかも知れません。
さっそく区の粗大ごみ収集に電話し、収集日が決まりました。今度収集に出す製品は。電子レンジというものがだいぶ小ぶりにはなっている頃の製品でしたので、オーブンやグリルの十分な機能が付いても、上から見て48cm四方ほどの大きさです。しかし、「持ち上げて下に降ろす」あるいは「少し移動させる」くらいはできますが、到底階下の収集所まで運べそうにないと気づきました。たぶん管理組合で台車は借りられるでしょうが、ふと小さめのが一台あれば、現在大活躍の扇風機を載せて室内の移動が楽になると思い至り、これを機に、我が家に今までなかった台車を購入することにしました。
レンジが壊れたのが夏でよかったと思いつつ、いよいよ三代目の検討に入りました。様々な製品を検索してみると、標準仕様や価格の変わりようには隔世の感がありました。小型化、簡略化、低価格化が進んでおり、もはや消耗品に近い値段になっていることにとにかくびっくりでした。前世紀末以降、パラダイムシフトを読めず、成功体験にこだわってなすすべなく完敗した日本の半導体産業を痛々しく思い返し、世界はここまで変化したのかと、良くも悪くもため息が出ました。日本人の目から見てどれほど良い製品でも、世界で爆発的に売れるイノベーションを起こせなければ生き残れない時代になったのです。いずれにしても半導体集積回路を製造する企業が大企業の下請け的位置に置かれている限りは日本に勝機はない、これは日本企業の構造的な問題です。
とはいえ、私はもう見る影もない感じの日本製品の中から、後発の日本の企業のものを選びました。日本の企業で頑張って働いている方々を応援する以外、私にできることはありません。今回初めてA社の製品を注文しました。処分するものよりさらに「一回り小型になっている上に、オーブン・グリル機能付きで値段は四分の一」という驚愕の実態。これでは儲けはでないでしょう。グローバル化が必然的にデフレをつくり出していくのもむべなるかなです。消費者にとっては有難いことと言うべきなのでしょうが、このままでいいとも思えません。
昨日製品が届き、汗だくになりながらアース線等設置を完了。小さすぎずちょうどよい大きさで、取扱説明書を片手に実物の使い方をチェックすると、必要にして十分な機能を備えていることが分かりました。さっそくレンジの温め機能を試したり、オーブン・グリル機能を使用する準備として空焚きしたりしました。届いた製品の仕様書によると、消費電力は以前のものの64%ほどになっています。う~ん、これはすごい。今はとにかく、この信じがたいコスト・パフォーマンスの製品を試してみるしかありません。