発端は帰省した時に台所で極めて古臭い茶色の壺を見つけたことでした。「これどうしたの?」と兄に聞くと「梅干し漬けてる」とのこと。どういう気まぐれで始めたのか、冷蔵庫には作りかけの梅酒の瓶もありました。「これ、どこにあったの?」と見慣れない壺を指すと、「床下収納庫」と言う。ハッっとしました。実家の片づけは一度手をつけて以来もう諦めているものの、それぞれの部屋の収納スペースにどんな物があるかは把握しているつもりだったのです。でも床下収納庫は盲点でした。
早速開けてみようとしましたが、金属の取っ手部分が錆でなかなか開かず、兄は「開けるの結構大変だった」と呑気なことを言いつつ、壺を取り出した後そのままにしたらしい。こういう時はクレ556に限る。油を差して木槌でトントン叩くうち、蓋が開きました。中には神代のものと思しき保存食糧(どろどろになった果実漬け、梅干し類、薄茶色に変色した未開封の白ワイン類、完全に茶色い油と化した未開封のマヨネーズ、いつからあるのか分からない穀物類など)がわんさか出てきました。父が果実や梅干しを漬けてたはずはないから、あれは母の手によるもの、つまり21年物でした。或る程度密閉されていたためか穀物類に虫が湧いているようなことはなかったのがせめてもの幸いでした。それなりの量があるので都会ではこういったものの処分は大変ですが、田舎では中身を裏の畑に埋めるだけで自然に返せるので、とても楽で助かりました。それから、場所塞ぎのためそこに保管されていたと思われる梅シロップを作るガラスの瓶とか麦茶を作る保存容器とかをきれいに洗い、収納庫にすっぽり収まる大きな収納ボックス2つも取り出して水洗いしました。これは人が入れるほどのサイズで2つを取り出して床下を覗き込むと、そこはまさしくただの土、屈めば家の床下全体を這い回れそうでした。何も居なさそうでしたが不気味なのですぐに収納ボックスを戻し、蓋をしました。推理小説の読み過ぎのせいで、「床下に死体や盗品を埋める」という場面を思い出し、これまで分からなかった状況が瞬時に理解できました。ともかくも一日がかりで床下貯蔵庫を掃除できてすっきりしました。
翌日農産物直売所に行くと、完熟の梅と氷砂糖があつらえたように置いてありました。今年はもう終わっただろうと思っていたのに「まだあった」と喜び勇んで即購入。梅を洗い、竹串でヘタを取り、殺菌・除菌したガラス容器に梅と氷砂糖を交互に入れて層にし、あとは待つだけ、梅シロップ漬けが完了です。兄を梅マスターに指名し、「2週間ほどで氷砂糖が溶けるはずだから、冷蔵庫に入れて!」と、私が去った後の処理を頼みました。美味しくできるかな~。これは次回の帰省が楽しみです。