2023年6月13日火曜日

「睡眠の個人史」

  食事や栄養よりはるかに地味な話題ですが、私が人の話を興味深く聞くのは睡眠についてです。眠りは来てほしい時には来ず、望まない時に来て抗いがたいこの欲望、4時間寝れば十分という人もいれば、8時間は寝る人、一日中眠い人がおり、歳とともに早寝早起きになるかと思えば、相変わらず夜型の人もいる・・・と、個人差の幅が大きく包括的説明に窮する生理現象です。個人の睡眠問題には役に立たないかもしれませんが、これこそ丹念に経過観察してビッグデータを集め、解析してほしいものです。

 睡眠を左右する要素としては、疲労の程度、外的環境(明るさ、気温・湿度、気象、環境音など)、年齢による身体状態などが考えられますが、いくつかのパターンが遺伝子的に決まっているということもあり得ます。そういった研究は既になされていることでしょうが、まだ明快な研究結果を聞いた覚えがありません。個々人が自分の身体を材料に考える余地はあります。私の場合、早起きが進んで四時起き、三時起きとなった時には「いよいよ年配者の仲間入り」と思いましたが、最近は早寝がさらに亢進しているためか、夜中に目覚めてしまうので、ラジオを聞いたり耳読書したりして過ごし、結局二度寝になり起きるのは六時近くです。気を付けているのは無理せず自然に任せること、今の睡眠習慣もそのうち変わる気がします。先日はめったに見ない夢まで見てしまいました。

 寝ていたら顔の辺りでむくむくするのがいる。りくが寝ていた。「なんだ、りー、ここで寝てたの?」と声掛けし、再び寝ようとして、「あれっ、りくは死んだんじゃなかったっけ」と思い、揺り動かすが、りくはムニャムニャ言いながら寝ている。「りー居たんだ」と安心し、お父さんに知らせておこうっと襖を開けると、父ではなく母が寝ていた。「お母さん、りーいたよ」と告げると、「それはいるでしょ」との返事。「お母さん知ってたのか」と、自分の寝床に戻って寝直したが、そのうち「お母さんはりくを知らないんじゃなかったっけ」と思い直し、「なんかへんだな~」と思ったところでさすがに目が覚めた。

 この夢に出て来たのは皆この世にはいない者たちです。りくを飼い始めたのは母の死の四年後であり、りくがこの世を去ったのは父の死の八年後だという点で、時間の観念がぐちゃぐちゃなのですが、それに時々気づきながらも自分の中で話は一貫しているのです。おかしな夢でしたが、「夢で会うのもいいもんだな」と、悪い気はしませんでした。昔から睡眠にまつわる一連のことは示唆的なもの、考えるところ大です。