2022年6月9日木曜日

「給湯器来ました」

  最初、電話で業者名を聞いた時はぴんとこなかったのですが、「ご注文の給湯器が入荷しました」と告げる電話だとしばらくしてわかりました。水難の相が現れたのは1年10カ月ほど前です。帰省先から戻るとバスタブに水がひたひたのところまで溜まっていました。非常時に備えていつも栓を抜かずにそこそこ水を張っていますが、これは明らかに水漏れです。たとえ縁からこぼれても排水溝に流れるだけなので階下へ被害はありませんが、この不具合を解決すべく、すぐ風呂屋さんに電話しました。見てもらうと特に悪いところはないが、機器類の誤作動であろうとのことでした。「今すぐでなくてもゆくゆくは交換した方がいいですね」と言われて少し悩みましたが、しばらく様子を見ることにしました。生物であれ物品であれ寿命が尽きるまで待ちたい、古くなったからといって捨てるのでは可哀そうだという思いが強くありました。その後は機器をなでて励ましたり、感謝を伝えたりしていたせいか、とりあえず何事もなく給湯器は動いてくれていました。

 ところがそれから感染症問題が起き、瞬く間にその流行は広がって日常が変わり、世界が感染症対応一色に染まりました。次第に住宅関連の物品が入手困難になってきたとの報道があり、給湯器はその筆頭でした。少し騒ぎが収まるまで待ってからと思ったのは、まだうちの給湯器が頑張っていてくれたからです。しかし、労働力不足による様々な製品の払底は長期にわたることがはっきりしてきたため、給湯器の注文をしておくことに決めたのが昨年12月下旬です。発注から到着まで5カ月以上かかったことになります。てっきり忘れられていると思っていたくらいです。「フルオートを頼んでいたと思うんですが、ただのオートでもいいかなと思って・・・」と口にすると、「お客様、うちは注文をいただいてから発注しています。これから発注となると・・・」との声にハッとして、「わわわかりました、すみません。そのままで結構です」と言い、最短の翌々日に工事してもらうことにしました。代金は発注時に聞いた金額でした。日本の会社はえらいもんです。ポスティングされたチラシを見て「大丈夫かな・・・」と思いつつ電話で注文したのに、口頭で約束したとおりに滞りなく給湯器が入手できたのです。工事の前の晩はお風呂につかりながら「23年間ずっと働いてくれてありがとう」と給湯器に礼を言いました。恐れていた今年の寒い冬も何とか乗り切ってくれて、実際まだ壊れてはいなかったのですが、電池切れかお湯の温度や湯量を示すパネルの文字盤は読めなくなっていたのですから、掛ける言葉はもう「お疲れ様でしたm(__)m」しかありません。二十数年という年月は工業製品の進歩にとって十分な時間であり、新しいパネルには今までなかった機能を示すボタンがあるようです。段々に慣れてまた仲良く過ごしたいと思います。