しばらくニュースを聞かない生活をしていたら、いつのまにか感染症が過去最大の勢いで流行していることを知りました。東京では一日の感染者が五百人に迫る数で、衰える気配は当分なさそうです。一年を振り返るにはまだ一カ月早いですが、今後の成り行きを考えると今おこなっても大きなズレはなさそうです。
コロナの年と言ってよいこの一年は、何といっても人と会うことができませんでした。これまでは毎年何回かは季節の折々に友人と出かけたり、外でのお食事や家でのお茶会などを楽しめたのですが、感染原因がはっきりと「飛沫感染」とアナウンスされたていたので、全く無理だったのです。正確に言うと、帰省したとき一度だけコーヒー店でお茶しましたが、これとてマスクの下からストローで飲むという惨めなものでした。お仕事をお持ちの方や在学中の方は、リモートやオンラインを余儀なくされたはずですが、やはりこれは直接会う体験とは違うものにならざるを得ないでしょう。私のような引退組には、そこまでする必然性がありません。「その他は・・・?」と言えば、買い物が制限された、マスクやトイレットペーパーが手に入りにくい時期があった、歯医者や美容院へ行くのがためらわれた程度で、過ぎてみれば許容の範囲です。
逆に「できたこと」はと考えてみると、
①気は遣ったが、帰省が今までのペースでできた。
②ウォーキングなどの運動は普通にできた。
③なんとか通院ができ、健診・検診の見直しができた。
④充実した読書ができた。
⑤家の片づけや模様替えができた。
と、まず不満のない一年だったことがわかります。むしろ私にとって最大のダメージは夏の酷暑と持病による体の変調で、これは感染症と直接関係がありません。
今年は読書によって暗い気分にさせられることが多かったのですが、それは自分の利益しか考えない悪辣な人々によって方向付けされた社会が、今行き着くところまで来て、多種多様な苦悩が生み出された実情をつぶさに知ったことによります。一方で、いま現実に存在している生物はすべて訳あって存在しているのであり、そのためにあらゆる生物がその種ごとに、それぞれ精緻で狡猾な、それでいて一人勝ちしないような生存戦略を持っていることにも深い感銘を受けました。人間の場合は異常に発達させた脳を武器に、生態系のバランスを壊しながら生き残ってきたわけですが、それがいつまで続くのか本当にわからない時代が来たと言ってよいのではないでしょうか。例えばヒトだけ感染する致死率の高いウイルスが誕生すれば、全盛を誇っていた恐竜が突然滅んだように、人間も滅び去らないとは言えないでしょう。あとから振り返った時に、2020年がその分水嶺の年にならないことを願っています