2018年6月7日木曜日

「大学敷地の変遷」

 先日御茶ノ水に行った時、用事が済んだのがお昼頃だったので、久しぶりに大学に寄ることにしました。長いこと改修で閉鎖された中央食堂は昼時でごった返しており、まず思ったのは「みんな授業に出てるんだな」ということでした。三十年前は、授業に出ない学び方や、そもそも大学に来ない生き方が許容されており、授業の時間に合わせてこれほど学食が混むということはなかったように思います。何より。以前提供される食事のメニューがガラスケースに陳列されているだけだった中二階に、某コーヒー店のカフェが入っており、大学食堂がこれでいいのだろうかとちょっと疑問を感じました。新入生を迎えてまだ2か月、大食堂に反響する声の騒々しさに嫌気がさし、結局、そそくさといつもの第二食堂移動して昼食をとりました。ふと思い出したのですが、三十年前は龍岡門の手前は畑になっていて、そこで草を食んでいるヤギを見に行ったものでした。なぜ覚えていたかというと、ヤギを見ているうちヤギの目が横長の見事な長方形であることに気づいたからです。以前は構内になんだかわからない場所がたくさんあったのですが、もうそういう場所はすっかりなくなってしまいました。敷地は全て名前のある建物で埋め尽くされ、言ってみればアメリカ西海岸のような雰囲気なのです。これも時代の流れなのでしょう。

 帰ろうとしてふとと総合図書館のまえを通ると、人が正面玄関から出入りしているではありませんか。この光景を見るのは数年ぶりです。思わず近寄ってみると、「新しくなった総合図書館を見に来てください」との貼り紙・・・。誰に対する呼びかけ化と考えると、やはり第一に学生や職員でしょうが、きっとあまりに長期間改修工事をしていたのでここを利用する人がめっきり減ったからではないでしょうか。さっそく入ってみると、途端に強烈な既視感に打たれて動けなくなりました。すでに喪失したと思っていた景色がそこにありました。三階まで続くあの赤絨毯も、三階のだだっ広い読書室の古い机と椅子も、二階のパソコンを使える読書室の場所や席数もほぼ昔通りに配置されており、各階の書架は昔のものに加えて新しく増えたものもきれいに格納してありました。最近は大事なものが消えていくばかりでしたので、まるで幻を見るような気分でボーっと立ち尽くしてしまいました。総合図書館は見事によみがえったのです。「今まで散々文句を言って悪かった。改修工事をしながらもなんとか開館で来ていたことの方が奇跡的だったのだ」と大いに反省し、この夏通えそうだなとうれしくなりました。この日は家に帰って寝るまで、なんだかふわっと幸せな気持ちに包まれていました。