2018年1月22日月曜日

『スター・ウォーズ』と『テルマエ・ロマエ』

 昨年の終わりごろ、映画のプロモーションに関連して『スターウォーズ』三作が放映されました。それまで一度も見たことがなかったのでちょっと興味がわき、TVも入るラジオで聞いてみました。その後、年が明けてから、日本の風呂文化を世界に知らしめたと言われる『テルマエ・ロマエ』の放映があり、こちらも同様に聞いてみました。結論から言うと、後者はそれなりに楽しむことができましたが、前者はどうしても最後まで聞くことができませんでした。

 この理由を考えてみると、第一に、前者はスペース・オペラという壮大すぎる物語で、オペラの素養がない者にはついていけなかったのに対し、後者は古代ローマと現代の日本を行き来する物語で、どちらもわりと身近で、自分の想像力でもついていけたためではないかと思います。特に前者はSFファンタジーにしてアクションが多用された映画なので、テレビではなくラジオで効果音を聞くだけではその部分の楽しみが大いに削がれたのは無理からぬことです。それに対して後者は、言葉による説明でそれなりに場の理解ができ、日常生活の中に普通に存在する事物が取り扱われていたため楽しめたのでしょう。

 第二の理由として、前者はおそらく最初から映画化する目的で作られた作品であり、独特なキャラクター等も映像がなくては楽しめないのに対し、後者は元々マンガが映画化された物であり、要所要所になるほどと思わせる掴みがあるためではないかと思います。言うまでもなく、マンガという劇画と台詞のハイブリットの読み物の市場は世界的に見ても日本の独壇場です。マンガという媒体は、少しでも手抜きやつまらない緩みがあったりすると連載打ち切りという真剣勝負にさらされています。後者はそれを乗り越えて生まれてきたものが、さらに多面的に評価されて映画化されたものであるだけに、話の展開は次々と馬鹿馬鹿しいが面白い要素がこれでもかと繰り出されてくる感じで、途中でやめてもいいけどもう少し聞いてみるかという気にさせるのです。

 第三に、前者は「正義」や「父と子」といったシリアスなテーマをもったいかにもアメリカ的な作品であるのに対し、後者は底抜けに明るいコメディでありながら、どこかほろりとさせる非常に日本的な作品であるためではないかと思います。これは好みの問題で、前者が世界的にヒットし莫大な興行収入をあげたことからもわかるように、人間性についての普遍的なテーマを持った作品です。それに対して後者は、日本の文化を風呂という観点から古代ローマのそれと比較し、極めて娯楽的な作品にしあげたもので、例えば主人公の悩みにしても「善悪」ではなく、せいぜい他人のまねをしてしまった劣等感といった具合なのです。その時の気分にもよりますが、後者は心理的負荷が少なく軽い気持ちで楽しめます。もっと言えば、タイトルからして前者は戦争映画なのに対して、後者は風呂賛歌の映画ですから、戦争を憎み、平和を愛する平たい顔族の一員が後者を好むのは理の当然なのでしょう。