2025年6月21日土曜日

「幾何級数的に増える選択肢」

  商売に携わる方々はさぞ大変だろうなと思う。報道番組は朝から晩まで「トランプ関税」の話題である。ジョン・K・ガルブレイスの『不確実性の時代』(TBSブリタニカ/講談社)が世に出たのは1978年で、現在同じく「不確実性の時代」と言っても、もはや隔世の感がある。思えばあの頃はまだ確実なものがちゃんとあった。今は、これから先すべてにわたって不確実なことだけが確実なこととして眼前にあるのである。

 商売と無縁の一般人も社会・経済状況に振り回されるほかない日々を送っている。米価はいつ落ち着くのか、取り敢えず早めに注文した通販の米はいつ到着するのか、この暑さでお米は冷蔵すべきか、E8系の故障で運休の東北新幹線は安心して乗っていいのか、こういった問題が解決しないと帰省時期も不確定なのである。暑さがおさまらなければ、お米を受け取って冷蔵庫に入れてから出発しなくてはならないし、届くのが朝ならその日のうちに出発できるが、夕方なら翌朝出発にならざるを得ない。運行状況にも注意を払って、新幹線にまた不具合があればしばらく待機、または出発を延期せざるを得ない。

 以前は当たり前にできていた「予定通りに出発」ということさえ、いくつもの場合分けをして考えないといけない状況になっている。その場合、採用されるのはたった一つの選択肢だけで、あとの全ては考えるだけ無駄となる。これがビジネスとなれば、将棋の対局並みの先読みをそれこそ気が遠くなるくらい重ねなければならないだろう。

 結局予定通りの帰省日に出発できたが、原因不明の車両停止事故以来、E8系の車両を単独で走らせてはいけないらしく、無人の「つばさ」何両かを先頭に、「やまびこ」を連結させたおかしな新感線に乗るはめになった。座れたのがせめてもの幸運。福島駅では山形新幹線に乗り換える人が、反対側のホームとはいえ、何百メートルも歩かなければならないようだった。お年寄りや荷物の多い人は本来しなくていい移動のために、大変だろう。故郷は6月半ばからもう真夏の暑さ、夕方ざあーっと夕立が来た。こういう自然現象は変わらない。8月の子供の頃の夏休みを思い出した。あの頃は何でも単純でよかったな。