リフォーム準備の日々はまさに光陰矢の如し。決めることが多いのである。先日は請負会社の方とショールーム巡りをした。浴室関係はTOTO、洗面所関係はクリナップを訪れた。何しろリフォームなるものについてド素人の私のこと、ショールームでは浦島太郎状態。この数十年での設備の機能性の進化に、驚きと感嘆の連続であった。竜宮城ならぬショールームにいるうちにすっかり楽しくなってきたが、「いやいや分相応に!」と浮き立つ気持ちをセーブする。専門家の説明を聞きながら、自宅のサイズや自分の好みに合わせてカスタマイズしていく。あくまで「自宅がショールームのようである必要はない」と、自らを戒めつつ決めていくが、この楽しさは抑えがたい。
話を聴いているうち、私のプランに一つだけまだ心配な点があることに気づく。それはトイレである。トイレは壊れていないので更新するつもりはなかったが、既に二十数年の年代品である。タンクが大きすぎるので、「もう少し節水仕様のものがいいな」と以前から気になってはいたが、盲点だったのは便器が置いてある床の強度である。長年のうちには床と便器の継ぎ目が破損して、重大事故になったケースが過去にあったという、恐ろしい話を聞いた。体重の重い男性の自宅での事例らしいが、この場合は下水事故なので、被害を与えた相手との揉めようは水道管破損の比ではないという。それはそうだろう。あらゆる水回りの事故の可能性を回避したい私は、トイレの更新も即決断。こういう時は迷ってはいけない。もう一度TOTOのショールームに連れて行ってもらい、必要十分の仕様を選んできた。リフォーム会社の方も「TOTOとクリナップを回って、またTOTOに戻るというのは初めてのケースです」と言っていたが、嫌な顔一つせずにつれて行ってくれた。一日がかりの製品選びだった。
その後は何日かあけつつ、数日に分けて洗面所とトイレの床の選定、ドアの選定、壁紙の選定があった。壁紙の方はあまりに多種多様で、決めるのに半年かかった人もいると言う。担当の方は「10往復くらい見て選んでください」と、昔の電話帳2冊分くらいの厚さのカタログを置いて行かれた。それから毎日カタログをめくって決めようとするのだが、日によって付箋を付ける箇所が違う。素敵なデザインがいろいろとあるが、「機能性を重視して決定する」と心に決め、絞り込んでいく。機能性というのは、「抗カビ」「抗菌」「撥水」「表面強化」「消臭」「通気性」「ストレッチ」「吸放湿」「汚れ防止フィルム」「ウレタンコート」など様々あり、壁紙の進化も著しいようである。とにかく迷う。適材適所で用いればリフォームもし甲斐があるというものである。しばらくは壁紙のことが頭を去りそうにない。このように多忙ではあるが、楽しい忙しさである。一か月少し前には五里霧中の暗闇にいたことを思えばすべてが夢のように思える。