どんな旅行でも、それが終わって自宅に戻ると、心底ほっとするのは私だけではないだろう。帰省先から戻って、私は「ああ、帰ってきた」と脱力した。家はリフォーム工事の真っ最中、壁がむき出しで木材が部屋に転がってはいるが、私はとても安らぎを感じた。
不在中、工事の進展と変更点等についてお電話をいただいた。水濡れの影響が壁板と床板にも及んでおり、その修繕で工期が延びること、洗面台を取り付ける場所の構造上、少し床から上げる必要があることなどであるが、まず設備(上水管、ユニットバス、洗面台、トイレ)の設置が全部終わったと聞いて驚いた。それは工程表より1日早かったからである。追加の工事が入ったのに、私の上京日程はそのままで大丈夫というのも不思議だった。何としても水回りを仕上げ、他の玄関周りの仕事を後にしてくれたのである。
事実、帰宅した午後から、私は新しい洗面台とトイレを使い、夕方にはお風呂に浸かり、洗濯もすることができた。洗面台は床から高い位置にあるので前かがみになっても腰が痛くならないし、トイレは以前に比べてはるかに静音、また節水仕様である。お風呂は底面の栓が見当たらないので、「お湯を張れない」と少々焦った。取扱説明書を読んでボタンを押して開閉することを知った。バスタブのふちの隅にある金属が怪しいとは思っていたが、まさかあれが開閉のボタンだったとは。風呂の蓋にも戸惑った。蛇腹のような蓋ではなく、大きな楕円を二つに割った形状だった。置き場所を変えて何回か試したが、バスタブとの間に少し隙間ができてしまう。「最近のバスタブはきっちり閉まらなくてもいいのかな」などととんちんかんなことを考えていたら、担当の方が来て何気なく閉めると蓋はぴったり閉まった。手品のようだった。左右かつ裏表を組み合わせる必要があったとは。今まで置き所に困ったお風呂の蓋が、バスタブの頭上部分に収納できるのはとても便利である。
安穏な書き方をしてしまったが、施工にあたる方々は本当に大変だったと思う。私はとにかく怪我無く、事故なく無事終わればそれ以上のことはないのであるが、大工さんは傍目にもわかるほど毎日奮闘されており、相当無理なさっているのではないかと心配になる。施工担当の方は新たに必要になった家具や細かい設備についての私の希望を聞いてくれ、それぞれ迅速に手配してくれた。リフォームの発端となった肝心の上水管の敷設は、この業界で右に出るもののない会社の精鋭部隊4名が担当してくれ、私の今後の不安材料は焼失したのである。私のリフォームに関わってくださっている方々は全員熟練のプロであるから、どんな想定外にも対応でき、私が心配することは何一つない。したがって安穏となるのも道理なのだ。有り難いことである。