夜明けとともに起き、暗くなるまで作業する日が続いている。この歳になって時間に追われる生活になるとは思っていなかった。家のリフォームが必要になったのである。工程の詳細はまだ未定だが、今のうちから片づけ始めないと間に合わないことだけは私にも分かる。家の中の或る一定の空間を工事のために空けるのは大変なことだ。狭い家ならなおさらである。「引っ越しは最高の断捨離」と聞いたことがあるが、我が家はもう二十年以上何ら変わりなく、生活の歴史がそのまま溜まっている。小さなデッドスペースを見つけては全て保管場所として利用してきたので、その量は目に見える量の倍になる。
毎日毎日片づけである。家具の移動には布や段ボールを底面にかませて引くしかない。そのためには、私の細腕で引けるほどには重量を減らさねばならない。大きな戸棚も動かすとなると、中身を全部出して捨てるものと取っておくものに分け、必要な物は工事が及ばない場所に移動する。整理してあるものを戸棚から出すと、信じられないくらい場所を取る。箱に収納しては別室に移していくと、どんどん部屋が狭くなり、エントロピー増大の法則に則りますます乱雑になっていく。もはや寝る場所を確保できるか・・・という悲惨な状態である。捨てるものも個人情報が絡んでいる場合はそれなりの処置をしなければならず、いくらシュレッダーにかけても終わらない。
「時間が夢のように過ぎていく」と言えば聞こえはいいが、生産的な作業ではないので気分は下向き。この合間に通院や年度初めの様々な申請準備、そしてもちろん体調を崩さぬよう食事にも気を配らねばならない。ラジオで桜の話題はずいぶん聞くが、とても花見どころではない。先日、日曜に教会へのバスの中から、初めて満開の桜を見て驚いた。礼拝は束の間の安息、力を得て、また怒涛の作業を続ける日々が続く。