2025年4月10日木曜日

「パソコン利用の矛盾」

  パソコンを巡る悩みはたくさんあるが、最近一番感じるのは「パソコン操作が不得手な人を置き去りにしようとしている」ということではないだろうか。試しに『日経パソコン』を読んでみたが、私などにはちんぷんかんぷん、関心のある人には生成AIの詳細は役立つ情報であり、まもなくサポートされなくなるウィンドウズ10から11への乗り換え情報も必要であるから、こういう雑誌は役立つであろう。しかし、マイクロソフトに言いたいのは、商品開発の方向性が恐らくはビジネスパーソン向けに限られていて、そもそも「パソコンは今のままでよい」という、デジタルに疎い多くの顧客のニーズを無視しているとしか思えないということである。

 もう一つは永遠の課題かもしれないが、個人情報に関するパソコンの使いやすさとセキュリティの問題である。個人情報を盗み取る詐欺的犯罪が増大するにつれて、セキュリティ設定も詳細で複雑になっている。パソコンは出荷時には危険と言っていいほど、個人情報が垂れ流しになる設定であるから、各人が設定を変えることになるが、この設定に関する説明が専門用語でなされているため意味が理解できない。本を読んだり、自分なりに調べたりしながら設定するが、それがうまくいくとは限らない。

 今までできていた音声図書館からのダウンロードができなくなり、私はここ何か月も頭を悩ませてきた。また、或るページを開こうとして「このページは表示できません」と表示されることもあった。どちらも解決法を捜してあれこれ調べ、「アカウントを変更したせいだろうか」「管理者の設定が間違っているのだろうか」と試してみた。が、余計状態が悪化して元に戻すことはあっても改善することはなく、全てが水泡に帰した。

 私が日ごろ使っている検索エンジンにはマイクロソフトエッジとグーグルがある。解決のカギは上記の事象が起きているのはエッジだけであり、有難いことにグーグルでは必要な用を足せていた。となると、両者の設定の違いが原因として考えられる。私としてはパソコン上に個人情報が残ることを極力避けたいので、検索エンジンの終了時には毎回履歴の削除を行っていたが、プライバシーとセキュリティの設定を見返してみたところ、思い当たることがあった。

 以前利用者のWebサイト閲覧履歴や設定情報などを保存するために使用されるCookieが問題になった時、私の頭には「Cookieは危険なもの」という刷り込みがなされた。利便性より安全性というわけである。しかし、或るページを開くには、現在アクセスしているWebサイトと同じドメインから送信されるファーストパーティCookieが必要な場合がある。危険なのは現在アクセスしているWebサイト以外のドメインから送信されるサードパーティCookieなのである。改めてエッジの設定を調べてみると、ブラウザの「追跡防止機能」を厳しく制限していたことが分かった。これを解除したところ、問題はあっけなく解決した。グーグルはこのあたりがまだ緩かったせいで、エッジが使えなかった間、助かっていたわけである。

 分かっている人には何でもないことなのだが、このことで私は何か月も悩んだ。この問題をウェブ上で解決しようといろいろな質問をしてみたが、AIによる回答も的外れで何度途方に暮れたことだろう。たぶん「いまさら聞けない」レベルの質問だったに違いない。もはやパソコン弱者にとっては、新たに便利な機能のあるパソコンの追求より、こういった当然分かっているはずの問題を簡単に解決してくれる機能が必要なのである。一般人は「安全で簡単」な機能を求めている。庶民をパソコンから遠ざけないためにもそちらの方面への尽力を是非お願いしたい。