2025年2月20日木曜日

「野鳥が気になる」

  現在、周辺で、あるいは世間一般の傾向か、「鳥」が静かなブームになっているのではないかと思うのは私だけだろうか。長年犬を飼ってきたせいで、これまで哺乳動物しか念頭になかったが、最近は鳥にも非常に心惹かれる。帰省時、冬場に渡来するオオハクチョウを見に行ったり、鳥類学者川上和人による、小笠原諸島の鳥の生態調査の話をラジオで聴いたり、日本野鳥の会関係者の方からグッズをいただいたりといったことが重なって、なんだかとても気になる存在になってきたのである。ラジオのリスナーからの、「ラジオ体操の時、うちのピーちゃんは指導者の号令に合わせてピーピー鳴いて、体操する励みになっている」といった投稿を聴くにつけ、飼い主との関係は動物も鳥類も変わらないなと思う。

 先日、国立科学博物館の特別展「鳥」を見に行ってきた。見るとは言っても私の視力では難しいと思いカメラを持参した。そのズーム機能を使って覗くと結構見えた。人は多く熱気があり、会場はとても賑やかだった。やはり一定以上の鳥ブームなのは間違いない。一括りに鳥といっても、種類によってその身体特徴や生態がこれほど違うのは、「ああ、なんと不思議なことだろう」と造化の妙に打たれてしまう。「なにゆえここまで…」と呆れるほどド派手な鳥はもちろん、どんな地味な鳥でも何かしらアクセント(切りそろえ忘れた頭髪のように一か所だけ羽毛が飛び出ているとか、体のどこかにごくわずかな赤い毛がある、とかね)を持っており、その多種多様な個性に、結局は神様の御業の素晴らしさに思いが及ぶ。とりわけ親近感を抱いたのは最後の方の展示にあったアホウドリ。「あ、このシルエットは…」と思ったらやはりそうであった。伊豆七島の鳥島で繁殖する特別天然記念物であるが、「コールリッジの『老水夫行(The rime of the Ancient Mariner)』にも出てきたっけなあ」と何だか慕わしい。

 帰り際に、置いてあったパンフレットやフリーのしおり(白黒でシックなシジュウカラ、青い背とオレンジのお腹が鮮やかなカワセミ、愛らしい顔で人気の白い妖精シマエナガの3種類あった)をいただいてきたが、その中に「ポケットサイズの『おさんぽ鳥図鑑』をプレゼント」というハガキもあった。出してみると、A4の四分の一即ちA6サイズの小冊子が送られてきた。これは表紙と背表紙を入れて24ページにわたる冊子で、身近な鳥についての緻密な絵と簡単な解説が書いてある、まさしくお散歩のお共にぴったりの小冊子である。ちなみに、これが送られてきた封筒には統一性のない切手が貼られていたが、同封の書類を読んで、この郵送の切手が寄付によるものだと分かった。こういう手作り感はとても好きである。もちろん私も寄付の切手を送った。送られてきた封筒には日本野鳥の会の活動紹介や探鳥会の案内もあり、体調のことがなければ入会したいくらいである。

 さて『おさんぽ鳥図鑑』によると、鳥を見分けるのに大事なのはまずサイズらしく、初めて知ったのだが、その基準となる鳥を「ものさし鳥」というとのこと。「ものさし鳥」には小さい順から、スズメ、ムクドリ、ハト(キジバト)、カラス(ハシブトガラス)がいて、なるほどなあと思う。スズメサイズを基準にするのはメジロ、ジョウビタキ、シジュウカラ、コゲラ、ツバメ、カワセミ、ハクセキレイ、モズ。ムクドリサイズを基準にするのはツグミ、アカハラ、カイツブリ、ヒヨドリ。ハトサイズを基準とするのはカワラバト、カケス、コガモ、キンクロハジロ。カラスサイズの鳥はハシボソガラス、トビ、カルガモ、アオサギである。これによって私の中ではツグミ、ヒヨドリ、カケス、カルガモのサイズ感は修正された(もう少し小さいと思っていた)。同じ姿形でも大きさが違うと印象が違うのは鳥も動物も同じである。日本で一番大きい鳥はオオハクチョウ、一番小さい鳥はキクイタダキ(体はウグイス色で体重5g、頭のてっぺんが鮮やかな黄色があるのでこの名が付いたか)だと分かった。この図鑑に出てくる細密画は、写真以上に特徴をとらえて描いてあるので、見ていてとても分かりやすく、何より楽しい。知れば知るほど同じ鳥類とは思えぬ姿形・生態であるが、皆それぞれに驚くべき合理性を身体化して、生活し子育てしている。いつも思うことだが、人間以外の生物のすごいところは、常に生きることしか考えていないことだろう。どんな状況でも生きようとする姿にいつも圧倒され、畏敬の念を禁じ得ない。